ホラー3本 | 映画、その支配の虚しい栄光

映画、その支配の虚しい栄光

または、われわれはなぜ映画館にいるのか。

または、雨降りだからミステリーでも読もうかな、と。

または、人にはそれぞれ言い分があるのです…。

「アス」

前作「ゲット・アウト」はいかにも社会派、寓話テイストが強い割にホラーとして全然ダメだったので、全く期待していなかったのだが、本作は悪くない。というか最近のホラーでは出色の出来。

 

冒頭、少女が遊園地で迷子になるシークエンスの丁寧な描写がまずいい。彼女はふらふらとお化け屋敷に入っていくのだが、海辺に設えられたお化け屋敷の風情がいいし、彼女の主観とロングショットで、そこに入るまでの少女のためらいと好奇心を上手く演出していたと思う。

 

またモンスターの造形もいい。モンスターでありながら、あくまでも人、「見知らぬ隣人」をパワーアップさせた風体がよく、凶器がハサミというのもいい。

最も素晴らしいのは、彼らモンスターが地下世界から這い出してきた、つまりラブクラフト世界の住人であること。

単なる、一家惨殺ものと思わせた映画がどんとスケールアップするのだ。

 

しかし、ごく一部の避暑地での出来事が、全世界に波及するのを暗示しているあたりまではいいのだが、これに変な理屈をつけはじめ、全部説明しちゃうのが、前作と同じ、ジョーダン・ピールのダメなとこで、説明せずにはいられない、なんか社会的な意味合い(格差問題とか)をつけたくなっちゃうのな。

 

最後のオチなどもこの説明がなければ、かなり悲惨な話で終われたんだが、どうも違う意味が出てきてしまう。これはつまらん。

 

「サマー・オブ84」

なんだ「グーニーズ」のホラー版か、ジュナイブルホラーにまるで興味が湧かないので、途中まではうんざりしながら観ていたが、殺人鬼のあまりの普通さに驚き、ラストにまた驚いた。ああそれでこの時代設定なのね、ホラー版「グーニーズ」なのね、という悪意あるラストが悪くない。

 

「ポラロイド」

これは単調なホラー。スティーブン・キングの緩い短編の映画化みたい。