ラピュタで二本 | 映画、その支配の虚しい栄光

映画、その支配の虚しい栄光

または、われわれはなぜ映画館にいるのか。

または、雨降りだからミステリーでも読もうかな、と。

または、人にはそれぞれ言い分があるのです…。

「われ一粒の麦なれど」

 

木下恵介と松山善三は嫌い。じゃ行くなよって話だが、とりあえずしっかりはしてるので、ま、行く。

でもやっぱつまらぬ。

「ごく普通の人でも英雄になれる」という話なのだが、そのごく普通ぶりがわざとらしい。いかにもそーゆー風に設えました感がうざい。

さらに木下門下のドラマツルギーなのかどうか、一面的な悪役を用意するわけだが、これが今回は小児麻痺を患った男。屈折した設定なので、いつものように単に悪いとするわけにもいかず、じゃ、ってんで、どういうわけかのホラー演出。これがはっきり言って笑える。イライラしながら笑える。

松山善三ってこういうホラーチックな演出を時々するんだが、上手いんだか苦肉の策なのか、どうも安易。

というわけで、言ってることは立派だが、師匠・恵介の「死闘の伝説」みたいな怪作です。

ちなみに森繁が特別出演。

 

「われ一粒の麦なれど」

1964年(S39)/東京映画/白黒/108分

■監督・脚本:松山善三/撮影:村井博/美術:狩野健/音楽:佐藤勝

■出演:高峰秀子、水谷良重、木村功、大村崑、大辻伺郎、田崎潤、田中春男、菅井きん、下元勉、市原悦子、岡村文子、名古屋章、浜村純

 

「女難コースを突破せよ」

 

「出世コースに進路をとれ」に次ぐ、サラリーマン喜劇の第二作、らしい。

こういう全く知らない映画が面白いと、名画座巡りが一層楽しくなるのだが、そう簡単にいかないのがプログラムピクチャーの凄さではある。

 

全シーンつまらぬ。

よーするに、小林桂樹と宝田明と高島忠夫がアドリブ交えて面白いコトするだろう、とあてにしていてシナリオも演出も特に何もしないでいた、という。

筧正典って数本しか見てないけど、ダメな時の力の抜け具合が凄いな、何もしないんだもん。

と見ていたら、最後の最後にちょっと驚いた。以下、ネタバレ。

 

植木等が特別出演。ちょっと「おお」となった。でも出てるだけ。筧正典は特に何もしない。ただ撮ってた。

これはネタバレでもなんでもないが、団令子史上、最も団令子の顔が丸い。

 

「女難コースを突破せよ」

1962年(S37)/東宝/カラー/83分

■監督:筧正典/脚本:長瀬喜伴/撮影:玉井正夫/美術:阿久根巌/音楽:松井八郎

■出演:宝田明、高島忠夫、団令子、中島そのみ、中真千子、水野久美、柳家金語楼、植木等、左卜全、森川信、有島一郎