3本指の男/事件記者 | 映画、その支配の虚しい栄光

映画、その支配の虚しい栄光

または、われわれはなぜ映画館にいるのか。

または、雨降りだからミステリーでも読もうかな、と。

または、人にはそれぞれ言い分があるのです…。

超久々にラピュタ阿佐ヶ谷。

 

「3本指の男」

横溝正史の「本陣殺人事件」を発表された翌年に映画化。なんか凄い。

Wikiでは「田山力哉の著作『千恵蔵一代』(1992)、江藤茂博等の編集による『横溝正史研究」(2010)などによると、脚本を担当した比佐芳武はミステリーのファンで、雑誌「宝石」に原作が連載されると直ちに映画化権を買い取るよう進言した」のだそうだが、比佐芳武が本当にミステリーファンかどうかは本作や「獄門島」を見ると、どうも怪しい。なんつうか、本格ミステリーってのを基本的にわかってない。

今やエンタテインメントの主流を走るミステリーではあるが、戦後まもなくの頃はこの程度の理解だったのだろうか。

 

原節子と片岡千恵蔵の電車での出会いや、果樹園の小道を二人が歩く横移動、ワトソン役を演じるメガネ女子の原節子が可愛いし、意外に悪くないなと思って見ていたが、話が始まると途端に失速。かの有名なトリックの解明シーンもケレン味がなくつまらない。ま、やってくれただけいいのか。

というわけで、これは歴史的な珍品。

 

「事件記者・影なき男」

「事件記者・深夜の目撃者」

NHKのTVドラマの映画化。

ちょっとモジュラー型風に展開するのもいいし、何より警視庁の記者クラブ詰めの面々の業界用語混じりのやりとりが楽しく、ちょっとこれはシリーズを全部見るべきであった。原保美が出てるからか、どうも「怪奇大作戦」の感じ。

撮影は共に松橋梅夫だが、俯瞰ショットやシルエットの使い方など、前者の方がシャープな印象。特にファーストカットの長い移動ショットがかっちょいい。時折間延びしたような風景ショットが入ったりもするのだが。

お話自体は「深夜の目撃者」の方が凝った感じ。前者では待田京介が可愛いく、後者は犯人役の野呂圭介が熱演。

 

「3本指の男」1947年(S22)/東横映画/白黒/72分

■監督:松田定次/原作:横溝正史/脚本:比佐芳武/撮影:石本秀雄/美術:岩野音吉/音楽:大久保徳二郎、古川太郎

■出演:片岡千恵蔵、原節子、風見章子、八汐路恵子、杉村春子、三津田健、宮口精二

 

「事件記者・影なき男」1959年(S34)/日活/白黒/54分

■監督:山崎徳次郎/原作:島田一男/脚本:西島大、山口純一郎、若林一郎/撮影:松橋梅夫/美術:大鶴泰弘/音楽:三保敬太郎

■出演:沢本忠雄、永井智雄、原保美、高原駿雄、滝田裕介、待田京介、丘野美子

 

「事件記者・深夜の目撃者」1959年(S34)/日活/白黒/53分

■監督:山崎徳次郎/原作:島田一男/脚本:西島大、山口純一郎、若林一郎/撮影:松橋梅夫/美術:大鶴泰弘/音楽:三保敬太郎

■出演:沢本忠雄、永井智雄、滝田裕介、原保美、大森義夫、高城淳一、山田吾一