そういうわけで、しつこく電磁波のことを書き続けている。それはやはり放射能なども含めて、見えないからその危険性がわかりづらいけれど、確実に危険性はありそうだということが、今回のコロナ騒ぎを通じてわかってきたからだ。科学的な話は今後丁寧にメモしていくつもりだけれど、今日はその前に、政治的な話をメモしておきたい。
電磁波は決して安全ではない。でも、世の中みんな普通に送電線の下で暮らしているし、普通に携帯も使っている。専門家の人も何も言わないし、大丈夫なんじゃない?…と思いたくなる。でも、専門家の人が以前から何も言わなかったのではなく、そういった研究は潰されたのだということを今日はメモしておこう。
今回、電磁波のことを調べようと思って借りてきた荻野晃也著「健康を脅かす電磁波」に、そのいきさつが記されていた。
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このように、送電線などからの低周波の磁場被曝で「小児ガン」、特に「白血病」が増加する可能性が高まるとともに研究がドンドンと増え始めたことはいうまでもありません。WHOの依頼もあり、日本も科学技術庁の費用で疫学研究が始まりました。責任者は国立環境研究所の兜博士でした。京大などの疫学者の協力をえて七億円をこえる費用で進められた結果が2003年6月に発表されました。その結果は「4ミリガウス以上の被曝で白血病(全体)が2.7倍、白血病(ALL:急性リンパ性白血病)では、4.73倍、脳腫瘍が10.6倍」という驚くべき結果でした。送電線から50メートル以内では小児白血病は3.08倍の増加なのです。
「家の上を送電線が通っている」ことを知って驚いたWHOの責任者が、日本の大物政治家との会談で、「ぜひ日本で研究を実施してくれ」「被爆量の多い場合のデータが欲しい」と要請したことで実現されたそうで、いわば日本でも最初といってもよい大々的な疫学研究だったのです。
ところが、結果が公開される5カ月前の2003年1月、文部科学省内の評価委員会はこの報告書に対して、評価対象とする12項目すべてにわたって、A、B、Cの三段階中の最低である「C評価」にしたのです。それを知って、私はガクゼンとしました。そして、「そのような最低の評価しか受けていない研究には影響は受けない」とばかりに官・産・学、それにマスコミも無視したのです。この内容を報じたのは、一部のメディアだけでしたから、国民の多くは知らずにすごしたことでしょう。6月になって発表された報告書を読んで、私はその内容のすばらしさに感激したのです。
この報告書は、2006年8月になって、世界的なガン研究専門雑誌である『国際ガン研究ジャーナル』に発表されているのですから、国内の評価がまちがっていたことは明白です。「よかったよかった」と思っていた2006年10月、兜博士の訃報を知らされました。リンパ性腫が原因だったそうです。本当に残念なことです。博士は、生前、私に対して「この結果には絶対に自身がある」とおっしゃっていたことを思い出します。
文科省の評価委員の中で、電磁波問題に詳しい人は多気・東京首都大学教授だけのようですから、多気教授がその評価を主導したのでしょうか?多気教授は日本のICNIRPへの代表委員として、日本政府とも関係の深い研究者ですから政府の要求をくんだのではないかと私は推察しているのですが、どうなのでしょうか。この兜報告評価に関する裏話が、2006年11月9日に『読売新聞』が報じていますので、それを紹介しておきます。
以下、読売新聞より
「安全?危険?電磁波 葬られた疫学からの警鐘」
先月10日、国立環境研究所の上級主席研究員、兜真徳氏が悪性リンパ腫で亡くなった。58歳だった。
電磁波の健康影響を研究してきた。1999年から、同研究所をはじめ、国立がんセンター、自治医大など11機関・大学の研究者が参加した大がかりな疫学研究の代表者を務めた。
全国の小児白血病患者312人の子供部屋の電磁波の強さを1週間にわたり計測する一方、603人の健康な子供を同じ居住地から抽出して同様に電磁波を計測。白血病と電磁波の関連を比較分析し、
「0.4μT(マイクロ・テスラ)以上の居住環境で過ごした場合、小児白血病は2.6倍に上昇する」との結果をまとめた。
研究は、文科省の科学技術振興調整費から総額7億2125万円を得て行われた。だが、3年目の中間評価で中止が決まり、翌2002年11月の最終評価で、目標達成度など10項目すべてで最低の「C評価」が下され、終止符が打たれた。
評価文書は「小児白血病患者の症例が少なすぎる」「電磁波以外の要因が影響している可能性がある」と問題点を列挙し、「科学的価値は低く、研究の結果が一般化できるとは判断できない」と断じている。
評価の際には、14人の研究評価委員を前に、兜氏が説明し、質問に答えた。「説明が下手だった点もあるが、何か個人的うらみでもあるのか、と思うほどひどい突っ込まれようだった」と同席した共同研究者らは振り返る。
「使った金と発表された成果が釣り合わない、という非難の空気が支配的だった。疫学研究への無理解も背景にあった」と証言する人もいる。人の集団で病気を引き起こす原因を調べる疫学は、コレラ感染や喫煙の影響解明に大きな役割を果たした。しかし、人、金、時間がかかるうえ、常に明確な結論が出るわけではないという難しさがある。
当時、文科省の科学技術振興調整費室長だった土橋久・同省地震・防災研究課長は「評価委員の座長と打ち合わせをし、入念に準備した。事務局として相当勉強した。『なんでこんな研究をやらせたんだ』と批判されますから。多額の税金を使ってね。だから力を入れて評価に臨んだんです」と明かす。
評価が下る3か月前、朝日新聞が1面トップで兜氏らの研究を報じた。
波紋が広がる。当時の原子力安全・保安院電力安全課長は、「兜氏も含め、専門家を呼んで勉強会を開いた」と言う。評価を担当した文科省の係長は、今も憤りを隠さない。「兜氏は『電磁波の健康被害はある。危ない』ということを根拠なく話していた。科学者としての資質に疑問を感じた」
科学技術振興調整費による研究評価は、01~05年度で計478件。オールC評価はこの1件だけだ。
電力10社のうち3社が、ホームページでこの評価を紹介する。九州電力はQ&Aコーナーで、四国電力は「疫学研究の例」の中で、それぞれのオールCの成績表付きで、詳細を載せる。
生前、兜氏は、繰り返し語った。「電磁波の問題は不安ばかりが先行し、正確に認知されていない。環境リスクに対し、日本人の意識は甘い。国や業界が『寝た子を起こすな』という姿勢なのも原因だ。」
今年8月、審査を経て論文を掲載する専門誌「国際がんジャーナル」に兜氏らの論文が載った。WHOが来春出す環境保健基準の文書にも、主な研究成果の1つとして盛り込まれる。
「間に合ってよかった。」兜氏の葬儀で、共同研究者らはほっとしながらも複雑な思いをかみしめた。
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「なんでこんな研究をやらせたんだ」って誰に批判されるのか…、ここらあたりを聞いてみたいもの。国民は7億円でこういう有効な研究がなされるなら、そんな批判などしないのでは?7億で多額の税金って言うけど、世界の失笑を買った今回のアベノマスクも調達費が90億円とか…。誰もそれに全力で臨まない。(臨んでくれ!)
いずれにしても、送電線などの低周波の電磁波に被曝することで、「4ミリガウス以上の被曝で白血病(全体)が2.7倍、白血病(ALL:急性リンパ性白血病)では、4.73倍、脳腫瘍が10.6倍」
という科学的な結論を国の研究機関の研究者たちが導き出した。それを「科学的でない!」と言って、慌てて潰した人々がいる…という話である。サンプル数が少ないと言うのなら、もっと研究を続けたらよかったのでは?
これを読んで思い出したのが、分野は全く違うけれど、地震予知の研究が潰されたという話である。国立大学の研究、民間の研究が一通り潰された後で311が起きた…ということが、311を予知したフリーの物理学者井口和基著「二コラ・テスラが本当に伝えたかった宇宙の超しくみ 下」に記されていた。そこからメモしてみよう。
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東京大学に上田誠也という地震学の大家がいた。この人は、上述したような電磁波や電離層や地電流などさまざまな物理的現象を利用して、総合的かつ統合的に地震の「短期予知」ネットワークを構築しようと試みた人物である。
この地震学博士が構想したものは、串田氏EPIOのFM電波観測、岡山理科大学の弘原海教授e-PISCOのラドンイオン計測、理研の人工衛星による電離層電子濃度変化を利用した予測、北大のFM電波観測などに加えて、GPSによる計測、地磁気観測や地電流計測や普通のプレートの歪み研究、そして地震雲や動物の異常行動という「宏観現象」などあらゆるものを統合したものである。そして、実現まであと1歩のところまで来ていた。それが「地震総合フロンティア計画」である。
この上田氏の最後の講演録「地震予知研究の歴史と現状」にはこの状況がつぶさに語られている。
以下、「」内は上田氏の講演より
中略
「阪神大地震の後、わが国の地震予知研究をどう進めるかについての模索の途中で、何人かの理解者のおかげで、科学技術庁(当時)が地震総合フロンティア計画なるものを立ち上げ、理化学研究所に地電流・地磁気観測を中心とした研究のために資金を出してくれることになりました。電波伝搬異常の研究に対しても宇宙開発事業団(当時)に資金を出してくれました。私どもは大感激して、同志を募って、東海大学を拠点として理化学研究所のプロジェクトを担当しました。北海道から沖縄まで、日本中にたくさんの観測点をつくって、馬車馬のように働いたのです。」
ところが、どういうわけか、ある時期からこのプロジェクトに冷たい風が吹き注いだ。
「これらのことから電磁気的地震予知は案外うまくいくかもしれないぞと張り切って、国際的な外部評価委員かに評価を受けたのですが、時既に遅く、その前に「短期予知は不可能」というお国の基本方針が決定しており、我々の計画は止められてしまいました。
『評価がこんなに高いのにどうして継続できないのか』
と担当官にきくと、
『問答無用。あれは科学的評価。我々は政治的評価をする』
とのことでした。これはわが国の評価システムの汚点のなる事件だったと思います。さて、そうなると、全国に作った観測点は片っ端からつぶされ、定職をなげうって各地からはせ参じた同士たちも失職、いまや我々も残党となってしまいました。」
こうして、あと一歩で完成間近の段階で、実際上ほぼできていた地震予知ネットワークは予算がゼロとなり散り散りばらばらに解体、終焉したのである。
中略
これは平成12年(2000年)のことである。この頃には地震の短期予測は既に端緒にされてしまったのである。これがどうして「科学的判断」ではなく「政治的判断」によって取り消されてしまったのか?どうして突然にこのプロジェクトが解散の憂き目に遭ったのか?」これは謎である。
中略
こうして、あまり一般人の我々があずかり知らぬうちに、串田氏のEPIOが2003年にマスコミに叩かれ、北大の電波研究所が廃止され、理研の人工衛星による電離層研究が頓挫し、上田誠也博士の「地震総合フロンティア計画」も消滅。最後の最後についに弘原海教授のe-PISCOが叩かれ静かになってしまったのである。もはや電磁波や電離層で地震予知する手法を失った。
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弘原海教授のe-PISCOは2004年に立ち上げられ、2004年の中越地震もキャッチしていたという。串田氏のEPIOも同様に中越地震をキャッチしていたという。それらが、静かになった後の311である。
今、メモしていて気が付いたのだけれど、両方とも電磁波に関連する研究であること、そして研究が潰された時期も2000年から数年間の間。これ以外にも潰されたものはあるのかもしれないけれど、同じような時期に潰された研究の後に、その研究に関連する惨事が起きているように思えてしまう…。
地震で言えば、2011年の東日本大震災だし、感染症で言えば、2009年に新型インフルエンザ、そして今回の新型コロナである。
(インフルエンザ症状は電磁波で引き起こされる話は前記事を参照
電磁波の生体への影響を考える(3) インフルエンザの症状は起きる )
研究者の方々は無念だったと思う。我々の知らないうちに潰されていっている素晴らしい研究があったということを、もっと多くの人が知っていてもいいんじゃないかな…。

