東欧(中欧)と出会える本①浦沢直樹『MONSTER』 | ひねもす読書日記

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終日、時間が空けば本を読む日々を過ごしています。

特に秀逸なミステリーに目がない私です。

本・雑誌・マンガetc.ジャンルにこだわらず、
こころに響いた作品のみを厳選してご紹介します。

東西冷戦時代~現代のドイツ・チェコを舞台に、歴史の大きなうねりが生み出した恐怖と惨劇が描かれる超大作。


『BILLY BAT』、『20世紀少年』の人気漫画家・浦沢直樹、渾身の歴史サスペンスです!!


<あらすじ>


1986年、西ドイツ・デュッセルドルフ。


ある日、アイスラー記念病院に勤務する日本人天才外科医・Dr.テンマの元に、瀕死の銃創を負った少年が運ばれてくる。


その少年・ヨハンを救ったことが、全ての恐怖のはじまりだった・・・。


手術の後、Dr.テンマを更迭しようとした野心的な院長ら上層部が怪死する事件が起こる。


時を同じくして、入院していたヨハンと双子の妹が失踪。


未解決のまま事件は闇に葬られたかに見えた。


それから9年後、外科部長として活躍するテンマの元にヨハンが現れる。


当時院長らを殺害したのは自分で、テンマのためにしたことだと告白し、再び姿を消すのだった。


自分が命を救うことで作り出してしまった”怪物”であると罪を感じたテンマは、無実の罪で追われながら、すべてのケリを自分でつける決意をする。


ヨハンのまわりで起る不可解な事件は後を絶たず、テンマはあと一歩のところで取り逃しながらも追い続ける。


ヨハンとテンマをめぐり、協力者達やテンマの元・婚約者のエヴァ、テンマを追うルンゲ警部、そしてヨハンの妹・ニナ・・・それぞれの運命が錯綜していく。


一体、怪物はなぜ生まれてしまったのか?


そして、テンマはこの惨劇をくい止めることができるのか・・・?


<おすすめポイント>


かつてこんなにも東欧への憧憬を誘われた作品があったでしょうか・・・!!


浦沢直樹さんの過去の名作『マスター・キートン』でも、しばしば東西冷戦の傷跡や、秘密警察などについて描かれてきました。


その頃から、浦沢作品にとって東欧は重要なモチーフだと感じていましたが、本作では全編・旧東ドイツやドイツ・チェコが舞台となり、その思いをより深くしました。


この作品で描かれる東西冷戦時の東側の空気感は、非常にリアルです。


ニナが怪物・ヨハンの出生が秘められたプラハの”赤いバラの屋敷”に辿りつく時の、「右に風見鶏、左に教会の尖塔」という光景は、実際のプラハ城からの眺めそのままで、虚実が頭の中で入り混じります。


怪物誕生の鍵を握る人物・フランツ・ボナパルタが絵本作家であるのも、チェコならではなのではないでしょうか。


そしてその絵本で描かれる物語のなんと異質なことか。


西欧諸国に比べて、私達にとって東欧はいまだ”異境の地”であることを実感させられ、舞台となった場所へ赴きたい気持ちになります。


主人公達が踏んだ石畳の上に立ちたくなるのです。


またこの作品で東欧への憧れに似た気持ちとともに感じるのが、怪物・ヨハンの底の知れない怖さです。


穿った見方をすれば、この物語でテーマとなっている怪物とは、ヨハン個体ではなく、歴史の生み出す負の遺産そのものを表しているのではないかと感じました。


アメリカでいよいよTVドラマ化が決定!!


その上、人気ドラマ『SHERLOCK(シャーロック)』のスティーヴ・トンプソンが製作・脚本・・・今から日本で放映されるのが待ち遠しいです。


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