1 フランチャイザーとは
(1)フランチャイズ・システムの定義は様々ですが、公正取引委員会が「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法の考え方について」と題し示しているものが解り易いかと思います。
http://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/franchise.html
(2)それを要約すると、フランチャイズ・システムとは、①本部が加盟者に対して、特定の商標、商号等を使用する権利を与えるとともに、②加盟者の物品販売、サービス提供その他の事業・経営について、統一的な方法で統制、指導、援助を行い、③これらの対価として加盟者が本部に金銭を支払う事業形態です。そして、④加盟者は本部から独立した事業者であって、⑤取引関係の基本は、本部と加盟者との間のフランチャイズ契約によってなされるもの、ということになるかと思います。
(3)そこで、本部と称されているものが、フランチャイザー(以下、ザーといいます。)です(これに対し、加盟者と称されているものが、フランチャイジーであり、以下、ジーといいます。)。
2 情報提供義務とは
(1)フランチャイザーには、情報提供義務があるとされています。よく引用されるのが、所謂、進々堂事件(京地判平成3年10月1日・判タ774号208頁以下)であり、特に「ザーは、ジーの募集に当たって、契約締結に当たっての客観的な判断材料になる正確な情報を提供する信義則上の義務を負っていると解すべきである」という部分が、強調されます(民法の代表的教科書・内田「民法Ⅱ債権各論[第2版]」東京大学出版会28頁でも、その引用がされています。)。
(2)しかし、だからといって、訴訟等になった場合「ザーには情報提供義務がある」というジーの主張を無批判的に受け入れるべきではありません。なぜなら、そこで提供すべきとされている「情報」がどのようなものであるかについては、十分争う余地があるからです。それに当たるかどうか検討すべき「情報」としては、①フランチャイズ契約の内容・主要な条項、②ザーの過去の経歴等、③ジーが開業後の見通しを立てるための情報、この3つに類型化されると思いますが、少なくとも③の情報、特に売上・収益等の予測については、ザーから独立した事業者であるジーがすべきというのが一般的な理解だからです(小塚「フランチャイズ契約と説明義務」判タ1178号171頁以下)。
ちなみに、前述した進々堂事件も「ザーが、加盟店の募集に際して市場調査を実施し、これを加盟店となろうとする個人等に開示する場合には、ザーは、加盟店となろうとする個人等に対して適正な情報を提供する信義則上の義務を負っていると解すべき」としているに過ぎません。このような市場調査結果の開示がされていない場合においてまで、ザーに売上・収益等の予測義務を認めるものではありません。また、このような適正な情報を提供する信義則上の義務が生じるのは、市場調査を実施するような段階に入ってからであり、不特定多数を対象としたセミナーに加盟希望者が参加しただけでは、そのような関係には至っていないと解されます(福岡高判平成13年4月10日・判タ1129号157頁以下)。
3 以上は、フランチャイザーの情報提供義務に関する一論点に過ぎません。その他の議論も多く、これらを含めザーの勧誘をめぐる裁判例は多岐に及びます。
この点、当事務所は多くの知識と経験を有していますので、関心があるようなら、遠慮なくご相談ください。
文責 弁護士 村上博一