<小川糸>ツバキ文具店 | 小さな好奇心

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読書と大阪・京都へのお出かけ(特に展覧会巡り)が大好きです♪

初めて読んだ著者の本が合わなかったため、それ以来手付かずのままでしたが、文房具が好きだからという単純な動機で気になっていたこちら。

鎌倉の山の麓で「ツバキ文具店」を営んでいるポッポこと鳩子。

鶴岡八幡宮からとったという名前ですが、"ポッポちゃん"というあだ名が可愛くて気に入っているので、ブログでもそう呼ぶことにします。

「ツバキ文具店」ではもちろん文具を扱っているのですが、手紙の代書も請け負っています。

お品書きや祝儀部はイメージしやすいのですが、離婚の報告や借金のお断り、果ては絶縁状まで!

当たり前ですが"手紙を書く"と一言に言ってもその内容は多岐にわたり、どれも興味深かったです。

手紙の内容を全て任されたり、引き受けて良い内容か悩んだりと小さな?トラブルは起きるのですが、全体的に丁寧で穏やかや日常が描かれていて、私、このお話大好きです。

どんな紙に書くか、それに合うペンやインクはどれが良いか、切手はどれにするかなどなど相手のことを思って書く手紙は内容はどうであれ、絶対気持ちは伝わるだろうなと思いました。

初めて知った文具もたくさん出てきて、手紙を書くのは好きだけれど、書く相手がいない私でも手にしたくなります。

特に羊皮紙と虫こぶインク。

子どもの頃、道で拾ったカラスの羽にインクを付けて遊んだことがあるので、羽根ペンは懐かしく感じました。

羽根は羽根でも全然違いますが。。

依頼人や内容に応じて字体を変えるというのは理解できましたが、時に下手くそな字を書いてこちらを驚かせてくれます。

ポッポちゃんは先代にみっちり仕込まれて、きれいな字を書くというのに…

ですが、どの文字も魅力的で気持ちが伝わってきます。

穏やかな日常が続きますが、所々で出てくる亡くなった先代との確執のお話は、不器用な2人の愛情のすれ違いが招いたもの。

そのことに気付いたポッポちゃんの行動に涙が出ました。

登場人物もみんな素敵で、出会えて良かったです。

さて、著者に対して苦手意識もなくなったので、他の作品も読んでみよう。