渡邉said

志田「着いたー!」

渡邉「やっと着いた」

志田「イエーイ!理佐ー!!」

渡邉「うお!」

志田「あ、ごめん」

バスから降りるなり至近距離から物凄い勢いで抱きついてきた愛佳。

それを慌てて受け止める。

今日は外でのMV撮影。

曇りの予報だったけど、実際は清々しいほどの快晴。

長濱「相変わらず愛佳は理佐大好きやねー」

志田「大好きー、一番好き、結婚しよ」

渡邉「はいはい、今度ね」

志田「え!いいの!?やったー!!オダナナぁー!」

織田「ん!?ストップまな…グハッ…」

これまた凄い勢いでオダナナに抱きついた愛佳は無意識にオダナナの首を絞めている。

あ、美愉も加勢した。

長濱「元気やね、皆」

渡邉「ね、見てるだけで暑くなりそう、特にあの三人」

長濱「ふふっ、それに今日は三十五度まで上がるらしいけん、ちゃんと水分取らんと」

渡邉「ねる何か持ってきた?」

長濱「水筒、麦茶持ってきた」

渡邉「おー、私は凍らせたスポーツドリンク二本」

長濱「準備万端やね」

渡邉「だね、あ、集合かかった、行こっか」



私の身体に異変が起こったのは、午後からだった。

長濱「理佐、どうしたと?」

休憩中、体育座りをして顔を伏せてたらねるが話しかけてきた。

渡邉「寒い…」

長濱「え!?」

ねるが驚くのも無理はない。

この真夏に寒いって言ってる人なんて聞いたことないだろう。

長濱「それをヤバいやつやない?」

渡邉「分かんない…」

長濱「でも_」

スタッフ「再開しまーす!」

立つと別に特別身体に異変がある訳じゃない。

強いて言うなら少し身体が重いこと。

そんなに気になるものじゃなかった。

長濱「大丈夫なん?」

渡邉「動けるし大丈夫」

この時点ではあまり重く考えていなかった。

これが多分ダメだったと思う。



渡邉「あっ…」

スタッフ「渡邉!」

渡邉「すみません…」

何度目かのミス。

振り入れの時には完璧だったはずなのに…

休憩、とコールがかかってから皆水分補給したり談笑したり。

スタッフ「渡邉」

渡邉「はい」

スタッフ「大丈夫か」

渡邉「いえ…」

スタッフ「そうか…だが、今日は予定が押しててな、日が沈むまでには全て撮り終えたい、もう少し頑張ってくれ」

渡邉「はい…」

この時点でもう、身体が普通でないことは分かってた。

肌で感じる直射日光が熱いってことは分かる。

それとは別に身体が感じる尋常じゃないくらいの寒気。

身体が思うように動かない。

でも、そのときの思考は「皆に迷惑がかかってる、もうミスしちゃいけない」ってことばっかりだった。



スタッフ「はいカット!MV撮影オールオーケーです!
お疲れ様で_」

あ、もうダメ…

そう思った瞬間に急に息ができなくなり、思わず地面に膝をつく。

渡邉「は…はっ…はっ…はぁっ…はぁっ…はぁっ……」

過呼吸だ。

視界が狭くなり、身体が地面に倒れた。

長濱「理佐!?」

たまたま隣にいたねるが駆け寄って来たのを合図に皆が集まってきた。

「理佐!」

「理佐しっかりして!」

「理佐!ゆっくり、ゆっくり息して!」

色んな声が聞こえるけど、もう、意識は薄れていて…

なんとか過呼吸が落ち着いてから、私は意識が朦朧としながら病院に運ばれた。

らしい。



渡邉「ん…?」

次に目を覚ましたときには寒気は無くなっていた。

その代わり感じる倦怠感。

私は白で統一された部屋でベットに寝かされていた。

なんとなく左腕に違和感を感じて見てみると、透明な管みたいなのが延びていた。

それを見て察した。

渡邉「病院…」

長濱「理佐、起きた?」

渡邉「ねる…」

長濱「気分悪くない?」

渡邉「大丈夫…」

長濱「そっか、喉渇いたら言って?飲み物買ってきとるけん」

渡邉「うん…」

長濱「熱中症やって」

渡邉「熱中症…」

こまめに水分補給したり直射日光はなるべく避けたり、予防はしてたはずなのに… 

長濱「寒気って熱中症の症状なんやって」

渡邉「そう…なんだ」

初めて知った。

目眩とか手足のしびれとかは聞いたことあったけど寒気は初めて聞いた。

長濱「点滴終わるまであと三十分くらいあるけん、まだ寝ててもよかよ?」

渡邉「うん…ありがと…」

動けるようになったら、皆とスタッフさんたちに謝りに行かなきゃ。

点滴が終わるまでの間はねるの言葉に甘えて少し寝ることにした。











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いつも読んでくださってありがとうございます!
この時期に大分季節外れですが。(笑)
皆さんは寒気が熱中症の症状だとご存知ですか?
私は実際経験があります。
直射日光が熱いということは肌で感じられるんですが、身体はとても寒いんです。
倒れたときに触れた地面も熱い。
スポーツ中で熱中症には気をつけて休憩や水分補給をまめにしていたなかでの出来事でした。
夏に屋外で何かするときは「こんなこともあるらしい」と思い出していただければと思います。
それでは、次回も是非読んでください!
これからもよろしくお願いします!