1回で終わるかと思っていたシャンプーの分析が、長くなってしまったので第二回。今回は、これで終了できると思うんですが、さてはて・・・

 

ということで、頭皮トラブルに悩む友人に相談された「花王 キュレル シャンプー」

見た目とお値段はこんな感じ

 

 

以下、公式サイトからの抜粋です。
http://www.kao.com/jp/curel/crl_shampoo_01.html#detail2

成分    グリチルリチン酸2K*、精製水、ラウリルヒドロキシスルホベタイン液、ラウレス硫酸Na、アルキルグリコシド、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸Na、POE(16)ラウリルエーテル、ヤシ油脂肪酸エタノールアミド、塩化トリメチルアンモニオヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体液、POE・POPジメチコン共重合体、PPG、無水クエン酸、水酸化ナトリウム液、水酸化ナトリウム、オレンジ油、ユーカリ油、エタノール、エデト酸塩、安息香酸塩
*は「有効成分」 無表示は「その他の成分」

 

さて

 

前回、全成分のうち、有効成分グリチルリチン酸2Kと以下の界面活性剤については解説入れました。

 

・ラウリルヒドロキシスルホベタイン液(両性)

・ラウレス硫酸Na(アニオン)

・アルキルグリコシド(ノニオン)

・ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸Na(アニオン)

 

今回は、サブ的に入っている(と思われる)以下の成分について。

 

・POE(16)ラウリルエーテル(ノニオン)

・ヤシ油脂肪酸エタノールアミド(ノニオン)

・塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体液(カチオン)

 

それでは始めます。

 

「POE(16)ラウリルエーテル(ノニオン界面活性剤)」

ノニオン系の洗浄成分です。肌に優しいという説と、洗浄力が高いという情報が混在しています。この辺りの原料は、花王さんが自社で製造して販売もしている原料なので、比較的高額な成分でも使えるという、ちょい裏山な感じの原料。おそらく、そんなに量は入っていないはずだし、洗浄補助として入れているのだと思うのですが、他の成分とかぶる部分も多く、洗浄成分として入れているのかどうかは微妙。まあ、肌への負担は少なそうなので、良い成分ではあるんだと思うのですが。すみません、情報あんまり無いです。

 

「ヤシ油脂肪酸エタノールアミド(ノニオン界面活性剤)」

これは、自分でも扱ったことがあるので、よくわかります。起泡補助及び粘度調整として入っています。

 

界面活性剤というのは、非常に複雑で、意外に誤った定義が世の中にまかり通っているのが現実。一般には界面活性剤=洗浄剤というイメージかと思いますが、粘度を高くしたり、泡立ちをよくしたりといった、様々な機能があります。この成分は、洗浄ではなく、こうした性状調整のための成分。微量で、処方の性質をガラッと変えてしまうので、処方設計師の腕の見せ所、というかベテランの技が光る部分ですね。

 

「塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体液(カチオン界面活性剤)」これは、コンディショニング剤。原料メーカーいわく、ヘアカラーの持ちを良くする作用があるとか。髪のもつれを防ぎ、柔らかく保つ作用もあります。カチオンをシャンプーに入れる技術は90年代初めごろからスタートし、処方技術と成分の両方の開発で発展してきましたが、最近は、こうした複雑な構造のカチオンが主流のようです。

 

界面活性剤ではありませんが、キュレルには、「塩化トリメチルアンモニオヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース」というやたらに長い名前の成分も入っています。営業指導をしていた時代には、こうした成分名をさらっと言えるように、練習しとけ、と新入り営業マンたちに教育していたものですが(笑)。これは、まあ、ざっくりいうと「カチオン化セルロース」という種類の成分でして、高分子のセルロースにカチオンをくっつけて、髪に付着しやすくした成分です。これが髪に付着することで、すすぎ時に「ぬるぬる」します。これで、すすぎの時のキシミを予防しているわけです。シャンプーの粘度を保つ役目もあります。

 

割と一般的な成分ですが、入れすぎると髪が膨らんでしまうという欠点があります。あと、粘度が上がりすぎたりとか。最近のノンシリコンシャンプーでは、これがやたらと使われているのですが、構造的にカチオンが入っていて、肌にも付着しやすいということで、それって肌に良いの?と疑問に思ってしまいます。多分、それを考慮して、あまりたくさん入れていないのじゃ無いかな、と思うのが、次の成分からも類推されます。

 

「POE・POPジメチコン共重合体」はいわゆるシリコン成分です。すすぎの感触調整と、洗い上がりのサラサラ感のために入っています。シリコンは、一時期のノンシリコンシャンプーブームで毛嫌いされていたかわいそうな原料ですが、実際に肌や髪に悪いというしっかりしたデータはありません。化粧品業界は、時々「○○無配合」を標榜するブームが起こり、全く根拠がないのに、瞬く間に広がるという、不思議な業界なので、これもそんな流れかなと。あ、話がそれましたね。

 

ちょっとユニークだと思ったのは、キュレルには香料が入っていなくて、代わりに「オレンジ油と「ユーカリ油」が入っていること。代わりにというのは、私の勝手な判断なのですが、どちらも香りの強い精油なので、間違い無いかなと。スルタインとかアシルグルタミン酸とか、そこまできつくは無いが、多少特徴的な匂いのある成分を使っているので、全く無香料は難しかったのかなと思います。

 

ただ、注意すべきは、この2成分とも、刺激の無い成分では「ない」ということ。ものすごく注意すべき、というレベルではないにせよ、敏感肌用の製品に入れていい成分ではないと思うのですが、この辺が、医療レベルになりきれない、キュレルの詰めの甘さかなと思います。

 

ここから先は、製品の安定化剤がずらずらっと並びます。

 

無水クエン酸、水酸化ナトリウム液、水酸化ナトリウム、は、pH調整剤。これだけ複雑な処方だと、pHの変化が製品の安定性に影響を与えるので、あまりpHがぶれないようにこれらで調整していると考えられます。

 

エタノールは不明ですが、防腐剤かなと。何かのキャリーオーバーかとも思ったのですが、それらしいエキス成分とかもないので。フェノキシエタノールが入っていないので、その代わりかなと思ったりします。もしくは、安息香酸塩の可溶化剤かも。安息香酸塩は、いわゆるパラベンなんかの仲間(という表現は許されるのだろうか・・)で、防腐剤です。ちなみにエデト酸塩はキレート剤。この二つを一緒に使うことで、防腐効果が高くなるという技術情報があります。

 

この種の、というか、低刺激をアピールしている製品にしては、キュレルのこの製品の防腐システムは、かなりガッチリしている方です。もともとヘアシャンプーは、お風呂などの水場で使用するため雑菌が混入しやすく、処方安定性の関係上pH6前後という雑菌が繁殖しやすい条件になっています。そこに持ってきて、このシャンプーのように、アミノ酸系活性剤など、腐敗に弱い原料を使っているので、そこはしっかりやっているという印象です。

 

そういえば、ユーカリ油にも、菌繁殖を抑える作用があったはず。この辺りの骨太な感じが、家庭用品のナショナルブランドを背負っている花王さんならでは、という印象を受けます。

 

とまあ、そんなこんなで、勝手なことをつらつら書き連ねてきたわけですが、まとめますと、というか勇気を持って言わせていただきますが

 

そんなに低刺激向けになってないんじゃない??

 

という感じです。

 

ものすごく考えられた処方だとは思うのですが、皮膚科専門医と一緒に敏感肌用化粧品の開発に関わった私の経験から言わせると、まだまだリスク回避が甘いという印象があります。もちろん、諸説ありますが、例えばアシルグルタミン酸は、長期使用では敏感肌に負担があるというデータがあります(あまり表に出ないデータで、最近の研究者は知らない人も多いのですが、業界ではしるひとぞしるデータがあります。メーカー門外不出のデータで、コピーすらもらえませんでしたが、ちょっと無理やり見せてもらったことがあります)。その他の成分も、例えば脱脂力という点では配慮されていても、その他の刺激やアレルギー性、長期使用での安全性などの配慮がどうなんだろうという疑問があります。

 

ユーカリ油も、敏感肌ではヒリヒリするという話が聞かれますし。

 

そんなわけで、あえて言わせていただくとキュレルは「ちょっと変わった処方なので、市販のシャンプーが頭皮に合わない場合の選択肢の一つにはなるかもしれないが、本当に敏感肌なら、使用にあたっては十分に気をつけて使うこと。できれば、お試し的に使って様子を見ることをお勧めする。あと、使用し始めて3週間くらいは気を抜かないこと。」ということになります。

 

敏感肌って、本当難しいんですよ。頑張れ花王さん(と、うえから目線ww)