2019年展覧会まとめ | カラフルトレース
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明けない夜がないように、終わらぬ冬もないのです。春は、必ず来るのですから。

今年最後の記事がスケートネタになるかと思ったら、なりませんでした!!

たまには違うネタにもお付き合いくださいな。2019年美術展まとめです。

 

本当はまとめて「芸術鑑賞まとめ」ってやりたかったんですが、実際のところバレエと美術展に大別されちゃうわけで、しかもそのバレエっていうのも夏の時期に偏っちゃう訳ですよ。とりあえず美術展だけ書いておけばいいか、と。夏は狂気のバレエ三昧をキメちゃったのでね。多分ボリショイのライブビューイングくらいしか他には行ってないや。

というわけで思い出せる限り時系列で簡単に書いていきます。

 

 

・国立新美術館「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」

トルコと言うよりはイスラム美術の壮大さに触れられた。

しかしイスラム圏の青色ベースの色彩感覚って土地を超えても似通うものなのかしら。

タイルの模様なんかはどちらかといえばアンダルシア地方で作られてそうな感じ。

偶像崇拝を禁止するがゆえに植物へ込められた象徴の大きさが印象的。

チューリップと薔薇は殊に特別そうなので、イランの薔薇の園に行きたいなという思いが深まった。

 

・三菱一号館美術館「ラスキン生誕200年記念 ラファエル前派の軌跡展」

題名の通り、ラスキンの一貫した意志と彼を取り巻く画家たちの変化が絡み合って、一枚岩ではないラファエル前派の道筋が楽しめた。どうしてもラファエル前派って耽美的なイメージが先行するけど、決して「美しさの追求」だけではなかったのだよね。

書物中心の手工芸志向など、少々ロシアの芸術世界派と重なる部分もあった。

「生活に芸術を浸透させる」という理念と、手に取って日常の一部に馴染みやすい書物は相性がいいのかしら。

しかしラスキンというのは曲者の理想主義者ですね。どうしても妻との逸話など思い出してしまうのは申し訳なかった…

 

・パナソニック汐留美術館「ギュスターヴ・モロー展― サロメと宿命の女たち ―」

実物を見てここまで印象の変わった画家は初めて。

かなり繊細な作風というイメージだったが、実際は偏執性さえ感じさせる装飾的な線描と、野性的な絵の具の筆触が画面上で奇妙に混じりあっていた。技術的には確かに粗もあるのだろう。本物を見るとそう思う。だが、それを補って余りある「雰囲気」づくりにかけては天才なのではないか。彼の世紀末性は耽美というよりグロテスクさに近い気がする。

モローの「出現」は生で見ると想像していたものの何倍もグロテスク。ヨハネの首から垂れる血の赤が画面の中では異様な彩度の高さだし、何せ筆触がグロテスクだから。粗野と美が混在する不思議な画家。

 

・目黒区美術館「世紀末ウィーンのグラフィック -デザインそして生活の刷新にむけて」

2019年ベスト展覧会に認定してもいい。

グラフィックに主眼を置きつつ、クリムトやシーレの絵画作品の印刷版も出展されていたし、なんといっても当時のポスター作品のお洒落なこと。赤・黒・金の色数は少ないけど目を引く配色と、緊迫感の漂う線描。その二つが合わさるとこんなにもスタイリッシュに仕上がるのかという感動。変な言い方だけど花札にも通じる美的感覚。

こうして見ると世紀末ウィーンってアールヌーヴォーとアールデコの狭間で爛熟した輝きを放っていたのだな…ということが実感できる。

あと、この時代はウィーンでも書物芸術が栄えていたのかという驚きね。

 

・国立新美術館「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」

推し学芸員の展示です!よろしく!

切り口があまりにも広いのと、貸し出してもらえた品揃えがあまりに豊かだったから、初めて「新美の展示室の広さを以てしても語り足りてないんだろうな」という感覚を味わった。

世紀末ウィーン概論って感じなんだけど、その前後の時代が流れも分かるように展示されていた。特定の画家よりは時代そのものに焦点を当てた、新しい切り口の展示。

結局この時代っていうのは時代丸ごと総合芸術みたいなところがあるから、時代の卓越性は絵画のみで語られるべきではなく、建築、音楽、デザイン、科学、思想、文学、あらゆる要素が絡み合って「世紀末」と称されるものなんだよ。

だからこそ「なるほど、このジャンルとこのジャンルはこういう接点があったのね」と示せる展覧会が良い展覧会のような気もするのですが、そういう点ではやっぱり最高でしたね。

 

・東京都美術館「クリムト展 ウィーンと日本 1900」

人が多かったことしか記憶になくて申し訳ないです(最終日に行くのが悪い)

前述のようにわたしの世紀末ウィーン観が「入り組んだ総合芸術」なので、クリムト一人に焦点を当てられると変に疑ってかかりたくなるのだけど、同時代の画家の作品と並べることでクリムトの装飾性の巧みさがよく分かる展覧会で、何とか行けて良かったのは間違いない。でも人が多かった。

都美さんはなんでいっつも建物のキャパに見合わない大人気展覧会をやっちゃうんですか(小声)

 

・三菱一号館美術館「マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展」

フォルチュニさんのこと微塵も知らずに参戦したのですが、やはり関心が一分野に留まらない総合芸術的な思考の持ち主って面白いですね。これも2019年ベスト展覧会ランキングに入るくらい。

その面白さを上手いこと展示してるなぁと。あとヴェネツィア拗らせオタクに優しい展覧会でした!

音声ガイドさんがゴンドリエーレっていう設定の時点ではい!ありがとうございます!ってなる。

ファッション好き、絵画好き、オリエンタリズム好き、舞台芸術好き、インテリア好き、ヴェネツィア好き、全員に刺さる展示だった。フォルチュニさん本人がそのくらい幅広いダヴィンチ的人間だったのだろうけど。

 

・パナソニック汐留美術館「ラウル・デュフィ展― 絵画とテキスタイル・デザイン ―」

そもそもデュフィの色彩感覚が好きで、今回は彼の絵画作品も見れるのかしらと期待して展覧会に向かったところ、驚くべき布地のデザインが繰り広げられておりました。

でもね、わたし絵画に限らずデュフィ好きだって確信した。彼の特長である明朗さ、けばけばしくないのに鮮烈な色彩感覚、そして音楽や陽光への愛着。これが全部ファッションや布地のデザインに生きてるんですよ。見ているだけで楽しくなれること請け合いです。

この色彩を見れば「狂乱の時代」の呼び名にも納得できます。

 

・日比谷図書文化館「鹿島茂コレクション アール・デコの造本芸術」

300円で拝めるのが信じられない作品の数々だった。本当に。驚異の展示数。

1900年代の初頭、お洒落なイラストレーターしかいないのか??最高の時代じゃん。

バルビエ大好き人間としては「あれもこれも見せてくれてありがとう」という感謝の念しかない。

でもバルビエ以外にもこんな洒脱な絵を描く人が揃っていたんだから奇跡の年代よ。

この時代が生み出した「ファッション・プレート」なるものはサブカルチャー的な扱いを受けがちで、なかなか美術史の文脈で真面目に研究されたことないと思うんですけど、これ文化史的な観点から深く掘り下げたら面白いんじゃないでしょうか(誰かやって)。

あと、さんざん言ってきたように19世紀末の芸術理念は書物芸術に集約されているので、それが結実した一つの形態を見せてもらえたのだという感慨が大きかった。

 

・国立新美術館「カルティエ、時の結晶」

思いの他ボリュームたっぷりな展示で、はぁ〜すごいな〜〜と驚嘆と感心を繰り返してたら終わりました。

カルティエのデザインや色使いにまでバレエリュスが影響を与えていると聞き、やはり彼らはアール・デコ最大の立役者だなと。もちろん展覧会の本旨はそこじゃないんですけどね。

「展示室の設計まで含めて一つの展示だ!」と断言できる貴重な一例でした。

宝飾品は当然ながら、カードケースの螺鈿細工にとても心惹かれたのを覚えている。

ターコイズとラピスラズリが幾何学模様のように埋め込まれていて、美しい青の均衡。

黒色で統一され、薄布に囲まれた展示室の中だからこそ、宝石は毅然と輝いていたのかもしれない。

 

・山種美術館「東山魁夷の青・奥田元宋の赤 ―色で読み解く日本画―」

一つ一つの色に込められた思念と技法の歴史が垣間見れて大変に良かったです。

日本画初心者でも彩りに心奪われてるとあっという間に終わってしまう展覧会。

わたしは全く日本画に詳しくないので、大体の人の名前は「そうなんだ」と追うに終始していたのですが、馴染みやすい筆致のものが多く展示されていたからか、敷居の高さを感じることなく見れました。

展示はあらゆる色・画家に注意が向くバランスのいいものだったんですけど、やっぱり東山魁夷の青色への思い入れは際立っていましたね……「青は心の奥に秘められて達することのできない願望の色」ってあまりにも本質じゃないですか。もっと語ってくれ。

結局のところ、日本画にももっと足を踏みいれてみようという決意以上に「魁夷と青色の関係が気になる」という感想が湧き出てきています。

 

 

こんなもんでしょうか。他にも行ったかもしれないけど思い出せない。

来年もひっそりと美術館に足を運び、上質な一人の時間を過ごせることを願います。

 

 

2019年もありがとうございました!

来年もどうぞよろしくお願いいたします。