これも口に出して言うとリズムがいい歌です。
みちのくの しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし われならなくに 河原左大臣(源融)
みちのく というのは、道の奥がつまったものだそうです。
しのぶもぢずり はこれで一語になります。今の福島県の信夫郡(しのぶのこおり)産の、乱れ模様にすり染めした布のこと。本来は忍ぶ草のすり染めの布と言われるようです。
この乱れ模様から、「みちのくの しのぶもぢずり」で次の「乱れ」の序詞になっています。
陸奥の「信夫のもぢずり」の模様のように、誰のせいで、私の心も乱れ始めてしまったのだろう。私自身のせいではないのに…あなたのせいですよ。
まあ結構な口説き文句です。(苦笑)
あなたのせいで心が乱れてしまっている…読み方もあるかもしれませんが、どうも真剣に恋に悩む…というよりは、一生懸命相手を口説いている、結構慣れているような感じがするんですよね…。![]()
歌の技巧やリズムがそろっているせいかもしれませんが。
でも、こういう歌のやり取りをして、少しずつ互いに恋人同士のお付き合いをしていたんだろうなあという、平安のころの恋模様が想像ができる歌です。
さて、作者は河原左大臣となっていますが、本名は源融(みなもとのとおる)。
実はこの人、嵯峨天皇の息子です。ただ、皇族にそのままいたのではなく、臣籍に下って源姓を賜っています。
…どっかで聞いたことがある話ですよね。
かの有名な「源氏物語」の光源氏とそっくりです。
実はこの源融は、光源氏のモデルではないかともいわれています。
臣籍に下ったので、皇位継承権はなかったんですが、重役は歴任したし、左大臣まで上ったし、結構羽振りが良かったみたいです。
なので、東六条に「河原院」と呼ばれる豪邸を建てて、そこに住んでいたのだそう。
河原左大臣の「河原」はこの河原院からきています。
なんと、宇治の平等院はその別荘だったとか。それがのちに寺になったのだそうです。
まあ、ものすごい羽振りの良さですよね…あの平等院の大きさはただもんではないです・・・。![]()
結構なプレイボーイだったらしいです。
…そんなところも、光源氏のモデルになったんでしょうかね…。(;^_^A
