こんにちは、今日は最近なぜか多い事例についてお話をします。
とある依頼者Aさんがご相談の際にこうおっしゃいました。
「一年近く前から遅れ遅れで、丸一ヶ月スキップしたこともあったのですが、ずっと辞任されずお手続きをしてもらっていました。ですが今回もう無理ですといきなり辞任されました」
これを聞いたとき、私は「ああ、あそこかあそこかあそこの事務所だろうな」と思いました。
するとAさんは「○○事務所です」と案の定です。
この何気ない発言の中には悪徳事務所の闇が隠れています。
普通の方にはわかりませんし、債務整理の仕事を専門としていない未熟な専門家では何が起きているのかもわからないでしょう。
返済が遅れているのに、なぜかずっと辞任されない状況にある皆さん。
辞任しないでいてくれる、ありがたい!ではないかもしれませんので、最後までお読みください。
さて、まずは前提知識を整理しましょう。
そこがわからなければ悪徳事務所のビジネスのからくりは理解できません。
債務整理をする目的は、1.今後の利息をカットし、2.長期分割にする、和解をすることです。
要は、もうこれから先は支払った分すべて元金に充てて、かつ、月々返済額を下げたいから長期分割にして、その間は一括請求も裁判もなしですよ、と債権者に約束をさせるわけです。
これには条件があります。
二度遅れないこと、です。
合計二度遅れたら約束は破棄されます。
いいですか? 合計二度です。都合よく解釈し、私は二度連続遅れたことはないから大丈夫だ、とおっしゃる方がいますが、違います。
もう一度言います。二回遅れたらアウトです。
和解が破談になることを「懈怠に引っかかる」といいます。
懈怠=罰則みたいな感じですね。二度遅れたらだめですよという規定に引っかかったということです。
では、Aさんの台詞を思い出してください。
完全に懈怠に引っかかっています。
もちろん、事務所が積立を貯めていてくれてそこからうまくやりくりをして返済遅れのないようにしている、というケースもあり得ます。
が、Aさんから詳しく話を聞いてみると、とてもじゃないがそんな余裕は作れない積立状況でした。
つまり、ずいぶんと前から懈怠には引っかかっていたということです。
さらにそれは、「二度遅れた時点、ずっと前の頃から利息が発生していた」ということです。
待ってください。
債務整理とは利息をカットすることが主目的のはずです。
それが一年近く果たされていなかったわけです。
その事務所はAさんから受け取った積立から毎月4万円ほど各社への返済に充てていましたが、もちろん懈怠に引っかかっていますから、4万円丸々は元金が減りません。
Aさんの借金総額は200万近くありましたから、遅延利息が20%だとすると、年間40万、月にすると33500円ほどが利息として取られてしまいます。
債務整理をしているとAさんは思っていました。
しかしうちに相談して初めて知ります。この一年は毎月4万円も払っていたのに数千円しか元金が減っていなかったということを。
そもそも懈怠に引っかかっていたなんて知らなかったそうです。
辞任されないものだから、どうにかしてくれていると思っていたといいます。仕方のないことです。
このようなとき、法律家は依頼人に和解書の懈怠条項に触れてしまっていることを伝えなければなりません。
当然です。もう債務整理をした効果は消えてしまっているのですから。辞任を通告し、この先どうするのかを依頼人に問うべきです。
しかし、なぜかその事務所は何も言わずにいました。
一年近くも放置し、依頼を受けたままにしていました。懈怠に引っかかっていることなど、専門家ですから、1000%当然に知っています。
なぜでしょう?
なぜだと思いますか?
ここに悪徳事務所の闇ビジネスのからくりが隠れています。
代行返済です。
このブログでも何度も取り扱っていますが、私はこの代行返済制度は廃止したらいいんじゃないかとさえ思っています。
全社和解が完了するまでの暫定的かつ緊急性のある事案だけは代行返済してもいいが、長期的には依頼人当人に返済させなさい、とお達しを出してほしいです。
さて、からくりについてお話しましょう。
Aさんの月々返済額は4万円と言いましたが、実は事務所に積立していた金額は違います。
5万円でした。
そろそろお読みの皆さんにも真相が見えてきたのではないでしょうか?
続けますね。
その事務所は毎月5万円を受け取ると、4万円を各社へ代行返済します。
そして代行返済手数料として1社2000円ほど徴収します。
(ちなみに代行返済手数料は1社につき1000円+税までしか取っちゃいけないと決められていますが、守っていない悪質事務所も存在します)
では、種明かしをしましょう。
その事務所の本音をここに明らかにします。
・Aさんのために和解が、返済の遅れにより懈怠に引っかかり、また利息が発生してしまっていることなど、当たり前に知っている。
・知っているがどうでもいい。
・毎月代行返済してもそのほとんどが利息に吸収されるだろうが、そんなことは知ったこっちゃない。
・なぜならこのまま積立してくれれば毎月振込代行をするだけで8000円近くもらえるから。
・Aさんには懈怠に引っかかっていることは教えない。
・教えたら他の事務所に相談に行ってしまうから。そうしたらもう代行返済で儲けられないじゃないか。
・債権者は利息が取れる、うちも儲かる。問題などどこにあるか。
・遅れたほうが悪いのだ。
と、これが真相です。
さてさて、ではなぜこんな状況なのに突然辞任されたのでしょうか?
不思議ですよね。こんなビジネスを裏で行っていたのですから続けていればいいわけです。
しかしそうもいかないことがあります。
債権者側が「先生、Aさんの和解した案件ですけど、和解どおりにちゃんと支払ってくれていませんよね。どうなっているんですか。巻き返しで3ヶ月分支払ってください」とか「遅れが重なるようなら裁判しますよ」などと事務所へ連絡が来ているわけです。
利息が取れるんだから債権者も文句は言わないだろう、というわけではないのです。
ちゃんと約束を守れと代理人をつめてくる会社は多いです。
当たり前ですよね。利息が取れる取れないじゃなくて、債務整理和解というのはきちんと支払ってもらうためにするのですから。
これをきっとその事務所はうまくかわしていたのでしょうが、いい加減どうにもならなくなったのでしょう。
それで今回Aさんは辞任されたというわけです。
「ずっとおいしい代行返済ビジネスで儲けさせてもらったが、途中から遅れが発生して面倒になった。債権者もうるさいし、もう手を離そう。あなたが遅れたから辞任しますね、と伝えれば何も文句は言わないはずだ。辞任通告しとけ(部下へ命令)」
というわけですね。
これって、一年前の懈怠に引っかかったときに辞任してもらえてたら、無駄な利息は払わなくて済みましたし、しかも傷は浅いうちなので再和解の可能性もまだ高いわけです。
それを引き延ばしたのはこの悪徳事務所の代行返済ビジネスのためなのです。
もちろん、代行返済とは何のかを説明し、任意だと伝え、それでも依頼人がお願いしますといえば、そのときは構わないと思います。
うんと言わせる雰囲気を作っていなければ、ですが。
しかし大半の事務所で(個人的統計ですと70%以上)代行返済の説明をしませんし、当然のように代行返済をしています。
ただでさえ返済で厳しい人たちから、さらに代行返済という形でピンハネをしようというのです。
口が汚くなりますが一言だけ、「ふざけるな」と言いたいですね。胸倉を掴んで。
ですから皆さん、代行返済を何の説明もされず当然に行われていたという方は、あなたのその事務所、悪徳はわかりませんが、少なくとも専門家としての説明義務を果たしていません。
どうして説明しないのでしょうか。うっかりでしょうか。うっかり忘れていて、とても誠実でしっかりとした仕事をしてくれている先生ならいいですね。でも、はたしてどうなのでしょうか。
とても長くなってしまいましたが、お伝えさせていただきました。
現在和解後の返済を代行返済によりやってもらっているあなたも、代行返済手数料がいくらなのかをチェックし(契約書に記載あり。そもそも記載がなかったら悪徳事務所です)、高い!と思ったら代行返済は強制ではありませんから自分で支払うので返済先を教えてくださいと連絡をしてください。
毎月銀行かATMで事務所へ一箇所積立をし、その後、事務所が各社へ代行返済をしていますが、
これをあなたがもう少し長く銀行なりATMの前にいて、ご自身で各社へ振込手続きを済ませれば、
無駄なお金を使わないで済みます。
お金は大事です。
お金は大事ですよ!
そして、あたかも当然であるかのように代行返済を続けている全国の事務所には、一日も早くその姿勢を正してほしいと思います。
皆さん、ご自身のことはご自身で守るしかありません。
自己防衛をしてください。
お願い申し上げます。
Luna司法書士事務所 代表司法書士 田 村 真 一
【Luna司法書士事務所】
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