八百屋を営む家の娘・お七、
いわゆる八百屋お七の物語を題材にした話です
題材にしてはいますが、
似て非なる話です!
お七の話は聞いたことはありましたが、
細部は忘れていました
記しますのは備忘のためと、
自身への一助の為の、
『八百屋お七』と『松竹梅湯島掛額』の
あらすじです。
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*八百屋お七の実話は、
お七一家の八百屋が大火で焼かれ、
そこで一時避難した先が、寺だった
という所から始まります。
そこでお七は、
その寺の小姓・吉三郎と恋仲になります。
しかし暫くのち家は建て直され、
寺を離れ、家に戻る事に。
叶うことなら
もう一度そばに居て暮らしたいと、
思い募ったお七。
もし再び火事で家を失えば、
また寺に避難が出来て、
吉三郎のそばでまた暮らすことが出来るはず。
お七は思い余って
自らの手で自分の家に火をつけます。
幸い火事はボヤに済みましたが、
お七は裁判にかけられます。
しかし放火の理由を述べれば
愛しい吉三郎に迷惑が掛かると思い、
その理由を述ベず…。
その際 裁判人は
お七の年が16と知りながら、
もし年が15なら無罪とするが、
年は幾つか尋ねたと言われています。
それは彼女を救う手立て。
しかし彼女は
吉三郎に迷惑が掛からないよう
潔く16と答え、
結果、市中引き回しの上、
鈴ヶ森刑場で火あぶりの刑に処され
死んでゆきました。
それが実話です。
潔くも散っていったお七が痛まれます。
そんな実話と
この演目が共通しているのは、
そんなお七の
吉三郎を思う熱い情念かな。
涙涙の演目でした。
『 松竹梅湯島掛額 』
(しょうちくばいゆしまのかけがく)は、
【序幕 吉祥院お土砂(おどしゃ)の場】
から始まります。
舞台は本郷駒込にある吉祥院という寺。
その本堂の欄間には
左甚五郎が彫ったと云われる
美しい天人がいます。
(寄進は曽我五郎・十郎追善のため、母曽我満江から)
(これは昼の部『吉例寿曽我』曽我兄弟に繋がります)
その天人が、
檀家である八百屋の一人娘
お七【中村七之助】に
そっくりと評判。
当の本人お七は、寺の小姓で、
曽我十郎の遺児・吉三郎【幸四郎】を
恋い慕います。
このお七と吉三郎の恋物語に加え、
お七の所へ
いつも紅を売りに来る、
紅屋長兵衛(べにやちょうべえ)
【通称べんちょう・市川猿之助】が、
お七の恋に手を貸そうと
面白おかしく活躍します。
吉三郎と夫婦になりたいと言い出すお七。
それを叶えてあげたい母・おたけ【門之助】
お七を愛妾に望む源範頼、
その家来の長沼六郎【松江】
お七を差し出さないようかくまう
寺の住職・月和上人【由次郎】
お七の下女・お杉に【竹三郎に代わり梅花】
様々な登場人物です。
折から木曽の源範頼が
軍を率いて攻めて来るというので、
吉祥院本堂には避難の人が集まり騒々しい。
そんな中お七は、
かねてから心を寄せている、
この寺の小姓・吉三郎と夫婦になりたいと
言い出すので一同びっくり。
母おたけは、吉三郎はいずれ出家する身、
また家業の八百屋は家を再建するため
釜谷武兵衛【吉之丞】に借金があるので、
釜谷久兵衛に嫁入りしてくれと頼む。
そこへ源範頼家来長沼六郎【松江】が、
範頼公の命令で やって来て、
欄間の天人に生き写しと評判の
お七を差し出せ、と言ってきた。
さぁ大変。
ここはべんちょう【猿之助】の考えで、
よく似ている欄間の天人と、
お七を入れ替え隠します。
六郎たちは欄間のお七を、
天人の彫り物と信じ込み去っていきます。
そこへ愛しい吉三郎がやって来たので
お七は本堂座敷に降りて来ます。
ところが国許へ帰らねばならない吉三郎、
お七が自分も連れて行って欲しい、と頼んでも
良い返事をしない中、
隠れ伺っていたべんちょうの入れ知恵から
とうとうお七の恋心を受け入れました。
一方、再び戻ってきたのは
家来・長沼六郎と、
八百屋の借金相手
釜谷武兵衛【吉之丞】たち一行。
そこで、
お七はじめ皆を
別の部屋に隠したべんちょう。
お七と母おたけを死んだことにして、
べんちょう自身が棺桶に入って潜みます。
お七と母おたけが死んだというなら、
早速棺桶開けて確かめるという一行。
ところが飛び出して来たのは本物の亡者と、
隠れていたちょうべい。
怒った武兵衛は、
振りかければ
人の体も心も柔らかくなるという
お土砂(おどしゃ)を供物壇から取って来て
亡者にかけ始めます。
このお土砂をちょうべいが取り上げ、
皆にかけて回り、
一同 腑抜け・腰抜け、
ぐにゃぐにゃふらふらに。
すっかり面白くなったべんちょうは、
上人様や、
同宿の了念【福之助】にもかけ始め、
てんやわんやの大騒ぎ。
この隙にお七は
恋しい吉三郎に心を残しながら、
下女・お杉に伴われ、
家に帰っていくのでした。
〜 一度暗くなり転換が施されます 〜
そして続く幕は
【大詰 四ツ木戸火の見櫓の場】
そんな吉祥院の騒動から暫く経った雪の宵。
愛しい吉三郎は
紛失したお家の宝、
天国(あまくに)の名剣を探しています。
もしそれが見つからなければ
明日午前6時の鐘を合図に
切腹しなければなりません。
その名剣を、
お七の実家の借金相手・
釜谷久兵衛が持っているという情報を、
下女・お杉から聞いたお七。
しかし暮れ六つ(午後6時)には
江戸の木戸は全て締まり、
通行出来ない状態です。
折角の情報なのに
愛しい吉三郎に知らせる事が出来ず、
そのうち時間が来て
吉三郎は切腹してしまうでしょう。
そんな折、
街の木戸には火の見櫓(ひのみやぐら)があり、
火事の際、その櫓の太鼓を打つと
木戸が開く事を知るお七。
しかし理由もなく
みだりに太鼓を打った者は、
火あぶりの刑に処されます。
しかしそれを知ったお七は 覚悟の上で、
雪の降る中、
火の見櫓に駆け上がり、
太鼓を打ち鳴らします。
丁度その時です。
武兵衛から名剣を奪ったお杉が駆けつけて、
お七はその剣・天国(あまくに)の名剣を持ち、
木戸の開いた江戸の雪の街を
吉三郎のもとへ駆けて行くのでありました。
感想へ続く→