It Had To Be You(もしあなただったら)

 作詞:Gus Kahn

 作曲:Isham Jones

 

この曲は「SEIKO JAZZ」シリーズで聖子さんが歌った中で一番古い曲です。
Isham Jones が作曲したのが1924年、今からほぼ100年前ですね。スコット・フィッツジェラルドが「ジャズ・エイジ」と名付けた、アメリカの大バブル時代のポップス(あるいはダンス音楽)です。
 

▼It Had to Be You / Isham Jones & his Orchestra(1924)

 

1930年代以降にはミュージカルや映画で何度も歌われました。

 

▼It Had to Be You / Ruth Etting(film” Melody in May” 1936)

 

古いスタンダード曲なのでカヴァーVer.は山ほどあって、私が知ってるだけでも20ぐらいはありそうですが、そのうち幾つか上げたいと思います。

 

▼It Had to Be You / Billie Holiday(1955)

 

↑1950年代には麻薬と酒、そして服役のダメージで往年の美声を失ったビリー・ホリデイですが、それでも one and only としか言いようがありません。

 

▼It Had To Be You / Dinah Shore with Andre Previn(1959)

 

↑ダイナ・ショアさん。クラシック界の巨匠でもあるアンドレ・プレヴィンとの共演ですが、このリラックスした自然な表現は、まるで小唄を歌う粋なお姉さんの風情ですね。個人的にはこの曲で一番好きな歌唱です。

ちゃんとヴァース(verse)から歌っているのもうれしい。

 

▼It Had To Be You / Michael Buble & Barbra Streisand(2014)

 

↑急に時代は下りますが、マイケル・ブーブレとバーブラ・ストライサンドの楽しいデュエット。2014年のクリスマス特番ですが、クリスマスに合わせてヴァースの歌詞を変えています。

バーブラさんはこの時点で70歳を超えているはずです。姿も声も若いですねぇ。聖子ちゃんもまだまだいける!

SEIKO JAZZ の「追憶」(The Way We Were, 1973)はもちろんバーブラ・ストライサンドがオリジナルですよね。

 

▼It Had To Be You / Gunhild Carling(収録年不詳)

 

↑元々はトロンボーンが本職だと思うんですが、なんと10数種類の楽器を自在に弾きこなすというガンヒルド・カーリングさん(スウェーデンのミュージシャン)。

ここでは、サッチモばりのトランペットとビリー・ホリデイ風のヴォーカルを披露しています。ゲテモノ扱いする人もいますが、私は大好き。どっかに忘れてきたものを思い出させてくれるんです。

 

▼It Had To Be You / Frank Sinatra(1980)

 

↑シナトラは1940年代からこの歌を歌っていたはずですが、レコーディングしたのは聖子ちゃんがデビューした1980年(シナトラ65歳)が初めてだったようです。

このヴァージョンは1989年の映画『恋人たちの予感』で使われました。

 

▼It Had To Be You / Frank Sinatra(1940年代?のラジオ音源)

 

で、2015年にシナトラの古いラジオ音源が発掘されまして、4枚組のCD・BOXとして発売され、そっち系のファンの度肝を抜きました。そのなかに It Had To Be You も入っていたわけですね。

聖子ちゃんのラジオやコンサート音源も是非ぜひそういう形で発売してほしいもんですなあ!!

 

他にも、トニ・ベネット、エラ・フィッツジラルド、ドリス・デイ、レイ・チャールズ、ビング・クロスビーからロッド・スチュアート、エルヴィス・コステロ等々、幾多のシンガーが歌っています。主なものはYouTubeに出てると思います。

 

 

さて、この曲のリバイバル・ヒットというべき状況が1990年ごろに起きました。

映画『恋人たちの予感』(When Harry Met Sally...1989)の音楽を担当したハリー・コニック Jr です。

 

▼When Harry met Sally... (1989) - Trailer

 

メグ・ライアンさんも今は61歳ですか。聖子さんと同学年(?)ですね。

やっぱり我々の世代のラブ・コメ(ロマ・コメ?)っていうとこの映画ですよねぇ。当時、レーザーディスクを買って(というか当時付き合っていた人に買わされたんですが・・・)何度も見ましたが、久々にAmazon Primeで視聴してみました。

やはり、ノーラ・エフロンの脚本が効いてますね。エフロンさんはこの後監督として、『めぐり逢えたら』や『ユー・ガット・メール』を撮るわけですが、そこでも古いトーチソングの類をたくさん使っていました。彼女の趣味なんでしょうか?

 

映画の中でハリー・コニック Jrの「It Had To Be You」が出てくるのは、冒頭のピアノ演奏とエンドーロールのメドレー歌唱だけで、クライマックスシーンではさっき上げたシナトラの歌唱が使われました。

サントラ盤としてコニックが演奏・歌唱したレコード(ほとんどは映画と別演奏)が発売され、シングルカットされた「It Had To Be You」がヒットした、という流れだと思います。

 

▼It Had To Be You / Harry Connick Jr.(MV)

 

 

『SEIKO JAZZ 2』でこの曲を選曲したのも、この映画が起点だと思われます。

 

▼もしあなただったら(It Had To Be You)/松田聖子

 

『SEIKO JAZZ』では、バラード、ボサノヴァ、バカラックのポップチューンが中心で、軽快なスウィング・ナンバーが一曲もありませんでしたが、ここにきてやっとという感じです。
やっぱりジャズはスウィングがなければ・・・ですよね。
アレンジはコニックの演奏の雰囲気を踏襲している感じでしょうか。間奏での短いピアノソロは、コニックが得意なストライド・ピアノ風の演奏です。
オカズにコーラスを使っているのも特徴的ですが、これはもうマントラですよね・・・今どきはマンハッタン・トランスファーって言っても知らない人が多いでしょうか?
 

▼Corner Pocket / The Manhattan Transfer

 

すいません、また蛇足でした^^;
聖子さんのアレンジはちょっと細工が多すぎて、もっとナチュラルにスウィングする演奏が聴きたいという向きにはこっちの方がお勧めかもですね↓

 

▼It Had To Be You / 松田聖子(2019.2.23 Music Fair)

 

しかし、この動画よく削除されずに残ってますね・・・
そういえば、この動画で和訳の歌詞が出ますが、この通り「あなたじゃなきゃダメなの」っていう歌なので、邦題になっている「もしあなただったら」はほぼ誤訳ですよね^^;

 

それにしても(56歳の聖子さんには失礼かもしれませんが)・・・

 

聖子ちゃん、かわいい~!!

 

では~~パー