宮下誠先生について書きたいとは思っても、なかなか書けません。
音楽ジャーナリストの林田直樹さんが、ご自身のブログ「LINDEN日記」
(
リンク) に、胸に迫る文章を書いていらっしゃいます。
林田さんもお書きになっていらっしゃいますが、お会いして直接お話をさせていただいた宮下先生は、本当にとても「ナイーブ」で「誠心誠意なところのある人」でした。
「カフェ・フィガロ」
(
リンク)を改めて聞き返そうと思っているのですが、まだできないでいます。
実はこの一ヶ月近くの間、里の猫さん のMusica Rediviva というレーベルの2枚のCDが非常に気に入ってしまい、ほとんど毎日のように聴いています。日によっては5回も6回も聴いてしまいます。
他にも聴かなければいけないCDがいろいろとありますので、ちょっと困ってしまうのですが、でも、2、3日聴かないでいると、どうしても聴きたくなってしまうのです。そして、何度聴いてもそのたびに深く心を動かされてしまい、また、たいていなにか新しい発見があってうれしくなってきます。
このようにある特定のCDに持続的に惹きつけられている状態になったのは何年ぶりのことでしょうか。ちょっと簡単には思い出せません。
ということで、夢中になっている2枚のうちの1枚目。
『ブラスの花束』山本訓久&アンサンブル・ペガサス・トウキョウ
アンサンブル・ペガサス・トウキョウ
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① デュカス:『ラ・ペリ』へのファンファーレ
② グレインジャー:『モールバラ公爵』のファンファーレ
③ ブルックナー:ロークス・イステ
④ ブラームス:コラール前奏曲『私はこの世から去らねばならぬ』Op.122-11
⑤ ヒンデミット:金管のための『朝の音楽』
⑥ シベリウス:ティエラ
⑦ マーラー:原光
⑧ マーラー:アダージェット
⑨ 山本訓久:日本の子供の歌による組曲
⑩ ランナー:シュタイヤー舞曲集
⑪ J・シュトラウスⅠ世:愛すべきアンネン・ポルカ
⑫ ヨハン&ヨーゼフ・シュトラウス:ピツィカート・ポルカ
⑬ J・シュトラウスⅡ世:ポルカ『ハンガリー万歳』
⑭ マーラー:「愛が私に語ること」
トランペット3、ピッコロ・トランペット、フリューゲルホルン、ホルン2、トロンボーン4、バス・フリューゲルホルン、ユーフォニアム、テューバ2、を基本編成とする2002年に結成されたブラス・アンサンブルです。
アルバム全体としての出来が素晴らしいのは言うまでもないことですが、7曲目の「原光」、心にしみ入ります。そして、その次の交響曲第5番からの「アダージェット」。これを金管アンサンブルで演奏するというのは、実は一種のパラドックスなのですが、これが何とも心地良いのです。
そして、10曲目から13曲目までの、「ニューイヤー・コンサート」的な曲目も素敵です。ところどころで、ストラヴィンスキーやリヒャルトのほうのシュトラウスのこだまが聞こえてくるような気がするのも楽しみです。
そして、最後の「愛が私に語ること」。
タイトルからおわかりになる方も多いと思いますが、交響曲第3番の第6楽章の編曲です。とても良いものです。ともかくお聴きください。マーラーがお好きな人にとっては、7曲目と8曲目とこの最後のトラックを聴くためだけにでも、このCDは必携のものと言わなければならないのではないでしょうか。
もう1枚は、「ニッケルハルパ」という珍しい楽器とチェンバロによる次のCDです。
“From Castle & Cottage” ネスボム(ニッケルハルパ)、エードルンド(チェンバロ)
この楽器は、スウェーデン語で「ニッケル」といわれるキーでメロディー弦を押さえて、それを弓で弾くという、スウェーデンの民族楽器です。下層にたくさんの共鳴弦が張られていて、ひなびているような、それでいて雅やかとも言いたくなるような(という矛盾した言葉でしか表現のしようがないのですが)、なんとも他では味わうことのできない不思議な魅力のある響きの楽器です。ジャケットからもうかがえるように外見もかなり不思議なものです。
詳しくはニッケルハルパ協会
(
リンクが貼ってあります)のホームページをご覧になってみてください。他にも興味深い記事が満載です。
演奏されているのは次のような曲ですが、実に絶妙なプログラムになっています。
① ヤンソン:教会行進曲
② サールストローム:『春の雫』
③ C.Ph.E.バッハ:ソナタハ長調
④ ネスボム:教会ポルカ
⑤ サールストローム:『あらし』
⑥ J.S.バッハ:組曲ト長調(無伴奏チェロ組曲第1番の編曲)
⑦ クープラン:前奏曲
⑧ マレ:『夢みる人』
⑨ マレ:フォリアによる32の変奏曲
1曲目のウロフ・ヤンソンの『教会行進曲』が始まった瞬間に、聴く人は、ニッケルハルパとチェンバロの織りなす、まったく初めて体験する素晴らしい音楽の世界に誘われていくことになります。
トルビヨルン・ネスボムが奏でるニッケルハルパに驚きを伴って惹きつけられるのですが、同時に、アンドレアス・エードルンドの弾くチェンバロの素晴らしさも特筆すべきものがあります。なんともまろやかな音の楽器を使って、その特徴を十全に生かした演奏が展開されています。
以上にご紹介したムジカ・レディヴィヴァの2枚のCDは非常に丁寧に作られた解説(ニッケルハルパのCDは、英語とスウェーデン語と日本語。ペガサスのCDは英語と日本語)のブックレットと一体となった美しいケースに入っています。このようなところにも製作者の心がこもっていて、その点でも、このレーベルのCDを手にした人は心が温まる思いをするのではないでしょうか。
誕生日を迎える友人へのプレゼントは、これからしばらくの間はこの2枚のCDで決まりです。
Muaica RedivivaのCD、この2枚以外のものもこれから順次紹介していきたいと思っています。
市原 繭/ジオンチェンバーオーケストラ、再び。
メンデルスゾーン:フィンガルの洞窟 作品26
シェーンベルク:浄められた夜 作品4(1943年版)
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92
2009年7月10日(金曜日) 19:30~
杉並公会堂大ホール
入場料:2500円(全自由席)
2009年1月、ヴェーベルンのパッサカリア&マーラーの交響曲第4番で鮮烈なデビューをしたジオンチェンパーオーケストラ(N響の白井篤氏をコンサートマスターに迎えた新進のオーケストラです)の第2回演奏会のお知らせです。
チラシに引用されている、私自身が以前に書いた指揮者の市原繭さんに対する評を引用させていただきます。
「…因襲的な発想や思考に縛られない自由で新鮮な目で曲に相対し、今までに演奏され尽した感のある交響曲や管弦楽曲のスコアから、全く思いがけない陰翳を備えた響きを引き出すことができる稀有な可能性の持ち主である」
市原繭さんはシェーンベルクに大しては並々ならない深い造詣を持っているので、『浄められた夜』はある意味正統的な演奏が予想されますが、メインに置かれたベートーヴェンの第7番は、普通にこの曲からイメージされるのとは一味も二味も違った、妖しく官能的な光を放つ演奏が期待できると思います。
一人でも多くの方に聴いていただきたいと思います。
【チケット取扱い】
★ e+(イープラス) http://www.eplus.co.jp/
★ Atelier de la Musique de Cocon 050-3098-5498
【主催・お問い合わせ】
★ zion chamber orchestra 事務局 090-9132-2008


