最終話・サミアちゃんのご高説39(次回エピローグ) | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

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このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
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勿論、翌日すぐに何の脈絡もなく公園の工事が中止になるわけがなかった。サミアちゃんの魔法は無条件な奇跡ではないことを改めて知った。

でも…。

「弊社は地域住民の皆様を一番に考える企業であることを望み、市側と住民側の対話が実現されるまで建築業務を実行しないことをご理解くださいませ。永倉建設」

僕のお父さんの建築会社は、高まる駐車場建設の反対の声をいち早く汲み、事実上この件をボイコットすることを決めた。
「お父さん、本当に良かったの?市側の印象悪くなったんじゃない?」

「大丈夫、市の担当者は憤慨してたが、企業のイメージとしてアップしたと社長は言ってたさ。」

これがサミアちゃんの魔法、燿子ちゃんのお願いの効果かわからない。
でも、誰もが志を持って行動した結果だ。
僕達だって早朝、休日には山南先生を手伝ってビラ配りをした。
お父さんもお母さんも「頑張れ」とだけしか言わなかった。
****
「燿子、言っとくけど、私は私の意思でこうするのがいいと思ったんだからね!」

「わかってるわ、お姉ちゃん。お姉ちゃんが公園を守りたい気持ちと、私が公園を守りたい気持ちは違うもの…。
でもまさか…。」

離れて暮らす私のお父さんは国会議員です。
お母さんが居なくなって直ぐに再婚したお父さんを私もお姉ちゃんも許せなかったけど…。
お姉ちゃんは公園を守る為にお父さんの「圧力」に期待した。
これもサミアちゃんの魔法の効果なのかな?
で、お父さんが市役所の人と話を着ける条件が私と会いたいって…。
私が嫌いじゃなかったの?私のせいでお母さんが出て行ったんじゃなかったの?
じっくり話せるなら、会ってもいいかなぁ…。私の気持ちはお姉ちゃんと違うんだし…。

***
「本当に行くの、サミアちゃん?」

「妙子の家族が一時的とはいえ引っ越す事が決まったら私が庭を借り続けるわけには行かない。
私は歩いて克浩の墓がある新潟を目指す。」

「また帰ってくるよね?」

「あぁ、だが何年かかるかわからない。それに克浩の墓が終われば、イギリスにも戻ってみたい。」
***
市側の代表として私のパパは白紙撤回の責任を取らされ、期限付きの地方勤務…。ママが単身赴任に反対したから家族で一時的に引っ越すことに…。
中学には戻ってこれるはずだからまだ私にもチャンスは…。

出発の日、公園はサミアちゃんを見送くる僕達と僕達の家族でいっぱいだった。

これが僕達の魔法だ。