「燿子ちゃん、そんなに怒ることないだろ!」
「別に怒ってないわよ!私がいつ怒ったっていうのよ!」
サミアちゃんの魔法を使って「風のイタズラ」をした僕が確かに悪いけど、そこまで機嫌を悪くするなんて、燿子ちゃんってやっぱりお子様だなぁ。
でもサミアちゃんの忠告通り、無闇に腹を立てないのが大人の男!落ち着け…僕。
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あぁ、もう!私はスカート捲られたくらいでいちいち怒る女じゃありません!
それよりも私は賢司くんがサミアちゃんの魔法を使わないとそういう事が出来ないってこと!
一日一回の魔法を何もそんなことに使わなくても…。
どうせ日没で消える魔法なら、もっとロマンチックなのもあるでしょ!
それにどうしても見たかったら、直接…って…別に見せたくないわよ!そんなんだから賢司くんは妙子ちゃんの気持ちに…。
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「フフフ、良い。少年少女はかくあるべきじゃ。
だからお前達はワシが見えた…。
では、人生の大先輩から子供に関する話を聞くが良い…。
昔はいつでも子供達はお腹を空かせていた。
だからサミアッドに出会った子供達は誰もが「食べ物」をお願いしていた。一日分の空腹を満たす食べ物を魔法で出せば、子供もサミアッドも満足であった。
かつての大人達は、石に変えられた食べ物を見れば
「欲張りな子供がサミアッドに日没までに食べきれない量の食べ物をお願いしたから。」
と考えた。
しかし、年月が流れ、科学は進歩し、それらは「化石だ。」と考えられるようになり、人々の心からサミアッドとその伝説は忘れられていった。しかし、中には本当に日没を過ぎたサミアッドの魔法も含まれていたんじゃがの…。
「いい話だね。
私達の時代だから化石を見ても驚かないけど、昔の人は『砂の魔法』って思うの当然だわ。」
「科学が否定したことは山ほどあるけど、それだけじゃないことも…。」
遥かなる歴史に触れ、僕達の揉め事が小さく思えた。
日没とともにサミアちゃんに別れを告げた。
明日の日曜は僕は家族で出かけるし、燿子ちゃんもお父さんに会う予定があるから、月曜の学校を楽しみに帰宅した。
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「おはよー妙子ちゃん。
昨日観た?」
「おはようございます、燿子さん。
はい!リビドー軍曹のアプローチにドキドキして…。」
「おはよう、燿子ちゃん」
「おはよう、賢司くん。」
(も、森崎くん…お、おは…。)
「惜しい、声になってないよ、妙子ちゃん♪」