カイレフォンの友人第二章 17 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

翌日

「今日は次期巫女長と呼ばれたロディテの生家を訪ねてみる。
司令官はいつも不在だからな。」

「貴方、少し休まれた方が…。」

「私は大丈夫だ。
それよりもソレント!
地震からの最初の公演は現代劇の『ヘラクレス』に決まった!お前には幼少時代のヘラクレスを演じてもらう。殺陣もあるから私が鍛えてやる」

町はずれ
ロディテの実家

「ここに最初に訪ねて来られた方が、最大の賢者様だと巫女長様は言われました。
秘密も何もありません。
この姿を見て下さいませ、賢者様。」

「ロディテ様、そのお腹は…。」

「はい、あと2ヶ月ほどで産まれます。」

「…清らかであるべき巫女が何ということだ…。」

「これが私が巫女長になれない理由。
そしてデルフォイの神殿の巫女が終わりを告げる理由とその責任です。」

「巫女ロディテ様、胎教に悪いことを覚悟で真実を伝えねばならない私を許して下さいませ!
巫女長様は…。」

「貴方がここに来られたということはおそらく…と思っておりました…。」


「時にロディテ様、何故にロイセンとの開戦の神託を出された?
貴方様は神の御言葉を聞けないはずでは?」

「はい、全ては私的な理由…。
磔にされても仕方ない私の大罪…。」

「『罪も無い我が国の少女を、ロイセンの兵が殺害したから戦争が起きた』
この話はロディテ様自身のことを、ねじ曲げて拡げられたのですね?」


「はい、外交交渉に来た大使はロイセン国出身である私の幼な友達だったのです。
かつては、年の近い男の子達と、野山で獣を弓で射って遊んでいた私達が今や…異国の大使と異国の巫女…。

本来はわかりあえぬはずの二人だったのです。」

「ではお腹の子はその…。」

「何度も死のうと思いました。
しかし、死ねませんでした。
それでもこのお腹の子を産みたいと思いました。」

「個人的な仕返しで戦争を始めたということか?」

「脅迫されていたのです。
ロイセンに降伏するお告げを出せと…。
その男は最初からそれが目的で私に近づいたのです…。」

「ロディテ様、一人よがりな色恋で何人がこの戦争で死んだとお思いか?」

「世界に逆らっても…。
この愛を信じて、この子を産みたいと思ったのです。
あと2ヶ月、貴方が来るのが遅ければ…。
どうぞ私をお斬り下さい、それが私の責任です。」

「貴女を斬れば罪のないお腹の子も死ぬ!
私には出来ない。

これも天命だ…。」