闘技場近くの帰り道
「…ソレント、自分より身体の大きな四人を相手に…無茶よ…。」
「働くことを忘れた成り上がりの市民階級が!」
「だったらお前は一生奴隷だよ!」
(ウル、ソレントが危ない。幻術で助けて!)
(駄目よ、前は相手が大人だったから助けてやったけど、子供同士のケンカに協力する気はないわ。)
(そんな…。相手は大勢なのに…。)
「お嬢様、逃げて下さい!」
「ソレント、助けを呼んでくる…。」
「駄目よ、あんたは兄貴達の大事なおもちゃなんだから、あたいが逃がさないわよ。」
「…貴女もカイレフォンの養女…。離してよ…。」
「あんたはこの後で、兄貴達からたっぷりと遊んでもらえるわ。
ボロボロになった奴隷君の目の前で嫌というほどにね!」
(どうすんの?このままじゃ、このちびっこの子の言う通りになるわよ。ソレントを助けられるのはあんたしかいないわ!)
(…そんな…私なんかが…。)
(あんたにしか出来ない助けかたがあるはずよ!)
(私にしか…わかったわ、ウル。)
「何をしているソレントよ!
そんな子供相手に時間をかけすぎだ!
お前はただの奴隷ではない!
偉大なる黒森の魔女、ベルフルーチェの娘、アルラウネの下僕なるぞ!
早く片付けんか!」
「アルラウネお嬢様…?」
「ソレント、こっちを見てる暇は無い!
右前方からパンチが来る!」
「は、はい。」
「左下から蹴りだ!」
「はい!」
「後方から掴みに来る!しゃがんでかわせ!」
「俺達の動きが見透かされてる!
気味が悪いよ、兄貴!」
「呪いだ!魔女の呪いだ!俺達呪い殺される~!」
「逃げろ~!」
「お兄ちゃん、あたいを置いてかないで~この子怖い~!」
「お嬢様を侮辱することは許さん!
背を向けたならこのレンガの破片を…。」
「ギャッ!痛ぇ!」
「これで暫くプロメテウスの町から出ないでしょう。」
「…ソレント、大丈夫?」
「私は大丈夫です。しかし、お嬢様、先ほどの力は…?」
「黒森の魔女は未来が見えるの。
一秒後の奴らを見れば、どんな攻撃してくるか全部読めた…。
こんな使い道があるなんて、自分でも…。」
「お嬢ちゃん凄かったよ!黒森の魔女なんておとぎ話と思ってたよ!」
「巫女なんて比べものにならない!
よくわからないお告げをするだけだからね。」
「永遠巫女(とわみこ)様が降臨されたんだ!」
「そうだ、永遠巫女様だ!」