デルフォイの神殿
門の前にて
独白
「巫女長様は言切れた!
最期を私に託された。
『私の死を7日7晩隠し通した後に、巫女達を解散させよ』と。
そして再び私に言われた。
『カイレフォンの友人よ、私の最後の神託には、神のお告げでもあり私の遺志でもあります。
貴方こそが最大の賢者です。』と。
我が友カイレフォンよ、お前は何という問いかけをしてくれたのだ!
私などが賢者であろうはずがない!
現にオーガスタスが私を神殿に差し向けた意図もわからず、大戦が勃発した真の理由も解けていない!
わかったのは開戦は巫女長様の意志ではなかったというだけだ!
プルート、オーガスタス、そしてマケドニウスよ!
お前達は何故そんなに己の野望に忠実でいられるのか、私にはわからない!」
同時刻 闘技場
「…闘技場って鎖に繋がれた奴隷が猛獣と戦う場所と思ってた…。」
「お嬢様、それはもう百年も昔の話です。
闘技場では、科学的実証に基づく訓練を積んだ闘士が力を競う場所です。」
「試合前にプルートさんの挨拶ですね。」
「本日は我が町ダイダロス出身の元老院 にて、先の大戦の英雄・イカロス司令官にお越し頂いた!
地震の復興の為に多額の寄付をされた司令官に習い、私は今日も無報酬で試合をする!!」
「…自分をいい人に思わせる所は凄い…。」
「そうですね、お義父様は理想を語り過ぎるプルートさんと、現実的なマケドニウスさんが両極端だと言っておられました。」
「…自分が鍛えて強くなったのと、人の強さ、弱さは別物…。」
「その通りです、お嬢様。
しかし、今日はプルートさんの思想より、レスリングを観ましょう。」
試合後 闘技場近くの帰り道
「如何でしたか?」
「…もっと怖いかと思ってた。一生懸命鍛えた人が頑張って勝つ姿は嫌いじゃない…。」
「よう、奴隷のソレントじゃないか!」
「違うぜ、兄貴!最近有名な『唄歌いの』ソレントだぜ。」
「こんにちは、お久しぶりです。」
「…誰?この人達?」
「カイレフォンさんのご子息達です。」
「もしかしてその子が、親父が言ってた魔女っ子ちゃんか?
可愛いじゃないか?
そんな奴隷より俺達と遊ぼうぜ!」
「…男の子嫌い…特にあんた達みたいのが…。」
「付き合えよ!」
「痛い!離して!」
「汚い手でアルラウネお嬢様に触るな!」
「奴隷が!四人相手にやるか!」
「貴様らも元奴隷だろうが!」