劇場近くの裏道
「ディオンさん、助けて頂いたお礼は言ったつもりですが?
家路を急ぎますので通して下さい。」
「坊や…。
プルート教官は以前から君を高く評価していた。
是非とも大学に入れたい人材だと。
でも君の先ほどの態度…。
プルート教官はさぞやがっかりされたでしょう。
貴方が教官に賛同するしないは勝手ですが、僕達の活動を一切邪魔しないと宣言してくれませんか?」
「子供の私相手に脅迫ですか?
それはプルートさんの意志ですか?」
「いえ、僕の意志です。
教官に気に入られるのは僕だけでいい!」
「…ソレント…この人怖い…。」
「大丈夫です、お嬢様。私は命に代えてもアルラウネお嬢様だけはお守り致します。」
「僕に…腰の剣まで抜かせないでくれ…。
君はただ約束するだけでいい。」
(…ウル、前みたいに幻術を使える?)
(了解、やるしかないわね。)
「おやおや、やはり教皇様と教会の教えが浸透してないこの国では、歪んだ愛に身を堕とす輩が後を絶ちませんねぇ。」
「オーガスタスさん!」
「ちぃ、俗人神父が何の用だ!」
「俗人?確かに。
でも、わたしは歴戦の傭兵でもあります。
わたしと一戦を交えますか?」
「くっ、異国の邪教に留学生!
だからこの国は変わらないといけない!今に見てろ。」
「ソレントくん、アルラウネちゃん。
お久しぶりです。
無事で何よりです。
よろしければ君たちのお義父様の屋敷まで同行しても構わないかな?」
「勿論です、ありがとうございます、オーガスタスさん。」
彼の屋敷にて
「我が従者オーガスタスよ、何と礼を言ってよいのやら…。ありがとう。」
「礼には及びません、我が主よ。
しかし、同志プルートの気持ちもわからないでもありません。
わたしの目から見ても改善の余地はたくさんあります。」
「従者オーガスタスよ、わかっている。だが力ではなく、話し合いで改善すべきを決めることが重要だ。」
「政治は門外漢ですが…。こと信仰に関しては、デルフォイの神殿こそ諸悪の根源と申し上げておきましょう。
巫女の堕落は酷い。いえ、決して異教徒批判ではなく…。」
「従者オーガスタスよ、巫女長さまは人格者だ。言葉を慎め!」
「その巫女長はご高齢です。
先の戦争もそのことが関係しているかもしれません。
我が主よ、この世には男と女しかいませんから。
ご自分の目で真実を確かめられた方が賢明かと存じます。」