劇場
「パルタカ、ロイセン、そして南方のラオにおいても国の政治は王制である!
しかし、我が国の共和制における元老院の選挙は…。」
「…何言ってるかわからない…。」
「申し訳ございません。アルラウネお嬢様。
穴に落ちた私を、助けて頂いたプルートさんが『礼をしたいなら私の講演を聴け』と言われましたので…。」
「…ソレントのせいじゃない…。」
「わかりました。
もう少し待って、プルートさんの話が続くようでしたら退席しましょう。
子供の私達には難しい政治の話ですからね。」
「……我が国の自由とは砂上の楼閣も同じだ!
自由なのは市民のみだ!
そして、その自由は多くの奴隷である同士によって支えられている。」
「そうだー!
いいぞプルート教官!」
「…ソレントも奴隷…。
私が自由なのは奴隷が働いてくれているから…?」
「お嬢様、『世の中は市民と奴隷、そんな単純ではない』とお義父様は言われてましたよ。」
「私はただのレスラーで終わるつもりは無い!
私はかねてからの計画を実行する!
期は熟した!
地震の被害は新たなる誕生の知らせだ!
私は大学を創る!
市民も奴隷も関係なく、真に才能を持つものだけが力を手にする権利を持つ。
そんな世の中を実現する為に!
大学では数学と体育を教えるだけではない。
『哲学』だ!
王による統治ではない。
選挙で選ばれた元老院議員による統治でもない。
大学という学問の要塞で、鍛え抜かれたエリートが統治する社会だ!
闘技場や劇場には、市民も奴隷も関係ないように!芸術や格闘から学問に舞台を移す時は来た!」
「プルート教官!本当に俺達奴隷にもチャンスがある世の中になるだろうなー?」
「我が同士達よ、だがそれには闘技場のレスリングだけでは資金が足りん!
皆の知り合いからの投資を求む!」
「異議あり!プルートさん!」
「…ソレント…何を言うの?帰ろう…。」
「お嬢様、少しだけお時間を失礼します。
プルートさん、ここは休館中のオーケストラです!
貴方の考えを弟子のレスラーに語るのは自由ですが、休館をいいことに寄付や投資を斡旋するのは如何なものか!
『名誉軍規律顧問』の我が義父の了承を得ての発言であろうか!」
劇場近くの裏道
「…ソレント格好良かった…。」
「講演を打ち切らせてしまいましたけどね。」
「坊や…。
このまま只で帰さないよ…。」
「確かディオンさんでしたか?」