カイレフォンの友人第二章 9 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

休館中の劇場にて


「♪旅人は応えた。
終わり等ないさ。
終わらせることは出来るけど。

貴方に会えた。♪
それだけで良かった。
世界に光が満ちた。♪

冷たい水を下さい。
出来れば愛して下さい。♪」
(ポルノグラフィティ作アゲハ蝶より抜粋)
「…本当に透き通る様な声にうっとりする…。」

「如何でしたか?アルラウネお嬢様。」

「…声は綺麗…。でも神話の曲難しいし…。台詞と踊りは普通…。」

「ハハッ、さすがお嬢様は手厳しい。きっと神話の時代の若者も、全てを理解して聴いていたとは思えませんよ…。」

「…舞台では奴隷も市民も関係ないんだよね…。
演技や歌は自信ないけど、踊りはお婆ちゃんに少し習った…。
ソレント…私と踊って…。」

「はい、お嬢様。喜んで…。」

「…舞台ではアルラウネって呼んで…。」

「ア、アルラウネ…。
思えばオーケストラとは上手い制度だ。観客は無料で観れるが、興味を持った者だけが有料のプログラムを買う。
そして学者と作家は有名になり、名を上げた歌手や役者は富裕層との縁談が持ち上がる。
お義父様の劇団には私以外の奴隷身分の者も数多く在籍しています。」

「…私もお義父さんの劇団に入って、お金を貯める。
そのお金でソレントを解放する…!」

「お、お嬢、アルラウネ。そのお気持ちだけで、私は明日も生きていけます。」

「…ずっとこうして手を繋いで踊っていたい…。
今はチョーカーもブレスレットも見えない…。」

「アルラ…。う、うわぁ~床がっ!」

「…ソレント大丈夫?…地震の影響で舞台の床が傷んでたんだわ。」

「困りましたね。すっぽりと腰まで、底が抜けた床にハマるとは。」

「…駄目…。私の力じゃ引き抜けない…。
待ってて。助けを呼んでくる…。
劇場に侵入したことは怒られても構わない…。」

「申し訳ございません、お嬢様。どうやら嫌な予感は的中しましたね」


「劇場を利用しようと思いついたのは私だけでは無かったようだな。」

「…プルート!」

「久しぶりだな。アルラウネさんにソレントさんよ。」

「プルートさん、今日はコロッセオで無報酬での試合があったのでは?」

「レスリングの試合は予定通り終わり、有志を集めて私の講演会に誰も居ない劇場を利用しようとしたんだが…。まさかこんな小さな先客がいたとはな…。
話は君を救出してからだ。
ディオン、手を貸せい!」

「…嫌な予感は彼等だわ…。」