カイレフォンの友人第二章 5 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

家路に向う馬車にて

「…ごめんなさい、ソレント…。」

「何の事でしょうか?アルラウネお嬢様。」

「…心配かけた…。」

「お義母様の方が心配されております。
お義父様も、帰りが遅いことに随分と心を傷められ、治安兵に捜索を依頼されてました。
幼い私には、まだ力でアルラウネお嬢様をお守りすることは出来ません。
しかし、この馬車で屋敷までお送りすることは出来ます。」

「…手綱捌き上手い…。」

「ありがとうございます。」

「…ねぇ、ソレント…。
貴方は生まれた時から奴隷だったの…?
なんでお兄ちゃんの所の使用人になったの…?」

「聞きたいですか?アルラウネお嬢様。」

「…聞きたい…。」

「私は…。オリーブ栽培をする両親に不自由なく育てられましたが…。
父が亡くなると、私は叔母夫婦の家に預けられたのですが…。
従兄弟からの陰湿な嫌がらせに耐えられなり、家を飛び出しました。
アルラウネお嬢様と同じ年に。」

「…飛び出して…行くあては…?」

「ありませんでした。
とにかく逃げ出しただけです。」

「…どうやって暮らして…?」

「世間は冷たい。身寄りの無い市民階級の子供を誰も受け入れてくれませんでした。
仕方なく衣服や靴を売り、野山で暮らし、大木の陰で寝泊まりしました。
しかしある日、あまりの空腹に耐えられず、市場でパンを購入したある男性から横取りしたのです…。」
「…まさかその人が…。」

「はい、お義父様でした。」

「…やっぱり…。」

「その場で治安兵に取り押さえられた私は、本来なら有罪が確定し、『訳あり奴隷』としての未来が待っていたはずでした。

しかし、お義父様は言われたのです。
『治安兵よ、その少年を放せ。
そのパンは私が少年に与えたものだ』と。」

「…それ以来使用人として…?」

「屋敷に着きました。
続きは後で。」


屋敷にて


「アルラウネちゃんごめんなさいねぇ、この人ったらまだ幼い貴女に難しい話をちゃんと説明もせずに…。
最初からソレントのことをしっかりと理解させるべきだったわ。」

「アルラウネよ、帰って来てくれて何よりだ!
取りあえず今夜はゆっくり寝て、明日ゆっくり話そうではないか!」

「…そうする…。
途中でカイレフォンの昔も、ソレントの昔も少し聞いた…。
私の寝室で直接続きを聞く…。いいでしょう?」

「ああ、願ってもないことだ。」

「…おやすみなさいいお義父さん」