【東方見聞録】vol.11 大谷石 | LPE.建築studioのCOLUMN

【東方見聞録】vol.11 大谷石

食事を終えた私たちは、観光名所である「いろは坂」を経由し、その後宇都宮方面へと帰路に就く。


途中、大谷石で造られた土蔵に興味を持った私のために、「それじゃせっかくだから」とさらに寄り道をしてくれた。


大谷石。

栃木県宇都宮市の大谷町附近一帯で採掘される石材で、柔らかく、加工がしやすい。

耐火性や調湿性に優れているため、古くから外壁や土蔵などに使用されているそうだ。


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ちなみに、こちらが道中、私が興味を持った土蔵たち。

外壁に大谷石を使用されており、こういった外観の土蔵は、広島では珍しい。


写真は上記2点のみだが、この附近一帯の土蔵は、ほぼ全て、この大谷石を外壁として用いたものばかりであった。



さて、先ず到着したのは「うつのみやろまんちっく村」という道の駅。

外壁に大谷石を施した現代風の建築が点在していた。



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大谷石を間近で見てみる…

「石」と言うには柔らかい質感で、それでいて加工のしやすさを伺わせるエッジの表情が、何とも面白い。


道の駅から少しばかり南下し、今度は「大谷公園」というところへと向う。

公園の案内板を撮影しておいたので、こちらの紹介についてはそちらに委ねることにしよう。



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どうでもいいことだが、我々建築に携わっている者にとっては「北」が「下を向く」というのはとても気持ちが悪いので、できればやめてほしい…(苦笑)



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写真がぶれていて文章が読みにくいのだが、ご容赦を。

せっかく友人が案内してくれたのに、雨が強くなってしまい、ドタバタの中での見学でした…



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大谷公園の一番の見所である「平和観音」。

こちらの足元にも案内板が見えるが、写真がない…

なので、少しばかり補足。


昭和23年から6年の歳月をかけて、総手彫りで造られた、高さ88尺8寸8分(26.93メートル)の磨崖仏。

背後の階段から間近で見ることができ、像上から大谷の町を見晴らすこともできるらしいが…、残念ながら階段は登っていない。


「平和観音」の近くには、「大谷観音」と呼ばれる国の重要文化財「大谷磨崖仏」も存在するらしい。

こちらには千手観音像や釈迦三尊像が大谷石の洞穴の壁面に掘られており、平安時代から鎌倉時代にかけて制作と推定されているようだ。

次の機会があった際には、是非こちらの「大谷観音」も見てみたい。




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大谷公園周辺の風景。

かつての採掘場が風化して、何とも言えない不思議な景色になっていた。



そして最後に宇都宮駅近くの「松が峰教会」へ。



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大谷石は多孔質石材であるため、柔らかく加工しやすい反面、吸水率が高く、風化しやすいという特徴も併せ持つ。

「風化しやすい」=デメリット、として捉えられることが多いが、状況によってはそれが良い方向に向かうことも珍しくない。


私はこの松が峰教会を見ながら、ヨーロッパの古い教会を思い出していた。


こういった宗教建築は、風化することによってより存在感が増し、建築として威厳や風格を備えることになる。

これは西洋の建築だけではなく、日本の建築にも当てはまる。




さて、その後私たちは宇都宮市内で友人たちと束の間の休息を楽しみ、そして別れた。

これにて「東方見聞録~栃木編」は終了である。

ホテルで一泊した私は、翌日、約10年ぶりの東京へと一人で向かった。


そのお話は次回vol.12から…








永久の旅路へ就いた最愛なる友人へ

感謝の気持ちを込めて