2011-03-31 12:57:16

地震は宮沢賢治に何を書かせたのだろう

テーマ:その他
それは小さなニュースだけれど、
見出しが目にとびこんきた。
 
銀河鉄道の夜再び 釜石線17日ぶり復活(日刊スポーツ3/29)
“銀河鉄道”が、岩手の夜に戻ってきた。
県内の花巻から釜石を結ぶJR釜石線は
28日、東日本大震災以来、17日ぶりに
花巻-遠野間で運転を再開。
(記事より)
 
夜間に走る釜石線は、宇宙旅行をする
銀河鉄道を想像させる。
(記事より)
ああ、乗ってみたいねぇ。事態が落ち着いたら
ぜひ訪ねたいよ。
 
この釜石線というのは、宮沢賢治の
「銀河鉄道の夜」のモデルになった路線だという。
そうか、宮沢賢治は岩手県花巻の出身だった。
 
僕はこの童話が好きで、何度も読んでいる。
登場人物をネコにした、ますむらひろし作の
マンガ版、それをアニメ化した「銀河鉄道の夜」
も好きである。
$★コピーライターが思わず ! となったコピー。-ginga
 
複雑なストーリーではないが、読むたびに
様々な感じ方ができたり、違った発見がある。
童話ではあるが、SFのような哲学のような
なかなか捉えにくい、奥の深い内容だと思う。
 
それなのに惹かれてしまうのは、どこか切ない
話とは対照的な銀河空間の旅のファンタジックな
描写のせいである。
不思議な世界へ引き込む磁力があるため、
おかしな言い方をすれば、トリップして
しまうのである。
 
ところで、この話の中で何度か
本当の幸せって何だろうと問いかける
箇所が出てくる。
登場人物のジョバンニやカムパネルラ、
乗客がそんなことを言うのである。
 
彼らは特別何か不幸な状況に置かれている
わけではないこともあって、妙に想像力を
かきたてられる。
なかでも最も印象的な科白はというと…
 
 
★今回のビックリマークな言葉コピー
 
 
僕はもうあのさそりのようにほんとうに
みんなの幸(さいわい)のためならば
僕のからだなんか百ぺん灼(や)いてもかまわない。

 
 
主人公のジョバンニが親友カムパネルラにそう言う。
銀河の旅の終わりがけの場面に出てくる、強烈な表現だ。
実はこの言葉、昔、文庫のCMで宮沢りえさんが朗読する
のだが、「銀河鉄道の夜」を読んでいたにも関わらず、
それまでこの一節には全く気づかなかった。というか
忘れていた。
CMから流れてきたおかげで関心を持ったのだ。
 

 
ここに出てくるサソリは、話の中のある
エピソードのサソリのこと。旅の途中でジョバンニたちは
赤く光る火に出くわす。それはサソリが死んで
燃えている火だという。
 
なぜサソリは燃えたのか。生前、サソリは小さな虫を殺して
食べて生きていた。ある時、イタチに食べられそうになる。
サソリは逃げる途中、井戸に落ちておぼれてしまった。
いたちは井戸の中でこう後悔する。
 
「ああ、わたしはいままでいくつのものの命を
とったかわからない、そしてその私がこんどいたちに
とられようとしたときはあんなに一生けん命にげた。
それでもとうとうこんなになってしまった。
ああなんにもあてにならない。
どうしてわたしはわたしのからだをだまっていたちに
呉(く)れてやらなかったろう。
そしたらいたちも一日生きのびたろうに。
どうか神さま。私の心をごらん下さい。
こんなにむなしく命をすてずどうかこの次には
まことのみんなの幸のために
私のからだをおつかい下さい。」

(原文引用)
 
そう言うと、サソリの体は燃えだし
いまでも続いているという内容。
 
さて、自分を百ぺん灼いてもかまわないという、
ジョバンニの自己犠牲を思わせる言葉に
カムパネルラはこう返す。
 
「うん。僕だってそうだ。」カムパネルラの眼には
きれいな涙がうかんでいました。
「けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう。」
ジョバンニが云いました。
「僕わからない。」カムパネルラがぼんやり云いました。
「僕たちしっかりやろうねえ。」ジョバンニが胸いっぱい
新らしい力が湧くようにふうと息をしながら云いました。

(原文引用)
 
いまこのタイミングで読むと、おのずと
今回の地震でわが身を投げうつように
親兄弟や友人、隣人、あるいは被災者を
救おうとした人々のことを思ってしまう。
 
そうした気持ちを傍らに置きながら
でいいと思うのだが、この機会に
本当の幸せとはいったい何だろうねと
考えることがいま必要なのではと強く思う。
 
すでに多くの人が言うように、
3月11日以前と以降では、多くのことが変わる。
社会制度も暮らしも経済も政治もね。
もちろん価値感や心のありようだって。
 
なかでも幸福感はまるっきり
変わるんじゃないかな。
後々の話、あの日を境に人生や仕事の
価値感が大きく変わったなんて人は
多く出るのではないだろうか。
 
そもそも「幸福」というのは定義しにくいもの。
衣食住に困らないという分かりやすい、
最大公約数的な意味はあるにせよ、その中味は
人それぞれだし、環境や年齢によっても変わる。
また、主観と客観では捉え方が大きく違ってくる。
それに相対的だ。絶対的な幸福というのは
定義するのは難しい。
 
それでもちょっと前までは、トルストイが
すべての幸福な家庭は、互いに似かよっているが、
不幸な家庭はどれもが、それぞれの流儀で不幸である

と「アンナカレニーナ」の中で書いたように
幸福のプロトタイプはあったと思う。
(昭和の広告やCMを見るとそれがよく分かる)
 
けれども、今回のことによって
信じられる確かものと、もはや信じられなく
なったものリストが大きく変わったのでは
ないだろうか。それにともない
これからは幸福のイメージも、またそれぞれの
流儀によって違ったものになるのではと思う。
 
この先、自分や国の未来がどうなるのか
明るいのかそうでないのかは見当がつかない。
それでも、自分にとって、コミュニティにとって
日本にとって、本当の幸いとは?を考えなくては
いけないように感じる。
つまるところ、傍観者ではいられなくなる
ということ。どうだろう?
 
(冒頭の新聞記事より再び)
賢治が生まれた1896年(明29)には、明治三陸地震と
陸羽地震が発生。岩手県と秋田県に多くの被害をもたらした。
亡くなった1933年(昭8)にも、三陸沖地震が起きた。
賢治は裕福な家庭に生まれながらも、地震被害にあった
貧しい人たちの悲惨な姿を見て育った。天候や気候に気を配り、
農業指導に力を注いだのは、地震の体験によるものだとされる。

 
この記事から察すると、賢治は本当の幸福とは何かを
真摯に問いつづけながら童話を書いたのであろう。
しかし「銀河鉄道の夜」でもその答えを見つけることが
できなかった。
 
それゆえに、この作品が永遠の未完成と言われる
のも分かる。それなのに多くの人々に好かれるのは
「銀河鉄道999」の影響ではなく、
やはり幸せとは何かを考えることの大切さを
読んだものが感じることができるからではないかな。
 
ともかく確かなのは、
すべてが変わるだろう、3.11以降の
世界の中で生きていかなくては
いけないということ。
 
ジョバンニの言葉を借りるなら、
僕たちしっかりやろうねえ。」って
気持ちを持って歩くしかないようだ。
 
 
■アニメ「銀河鉄道の夜」
予告編

 
銀河鉄道の夜 [DVD]/田中真弓,坂本千夏,納谷悟朗

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■銀河鉄道の夜(新潮文庫・青空文庫)
「銀河鉄道の夜」はいくつかバージョンがあるが、
新潮文庫の「新編 銀河鉄道の夜」が、底本なので最終形だと思う。
すぐ読みたい人はこちらから
 
新編銀河鉄道の夜 (新潮文庫)/宮沢 賢治

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■マンガ銀河鉄道の夜
アニメの原作。
最終形と初期型「ブルカニロ博士編」を収録。
 
銀河鉄道の夜 (扶桑社文庫)/ますむら ひろし

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■朗読「銀河鉄道の夜」
それと、おススメしたいのが
朗読「銀河鉄道の夜(全編)」(無料)
Podcastsで聴くことができる。(全19ファイル)
 
iTunesで「銀河鉄道の夜」で検索してダウンロード。
静かなピアノをBGMに、女性が朗読する。
 
「銀河鉄道の夜」はわくわくする楽しい話ではない。
どちらかというと悲しい話である。それなのに
夜、しんとした中でこの朗読を聴いていると、
心も呼吸も穏やかになってくるのだから不思議。

しっかりとしながらも、温かみのある声と
ファンタジックな描写によるものなのだろう。
一度に聴こうとすれば、2時間以上かかるので
毎晩少しづつ聴くといい。
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2011-03-17 15:57:36

冷静にふるまうための3つのルール

テーマ:その他

ここ2,3日、被災者以外の人々の
心の荒み具合が気になっている。
 
地震直後からテレビやネット、ツイッターで
情報収集していた。特に最初の二日間、
ツイッターでの情報提供や呼びかけは
それはもう見事な連携であった。
心底すごいと感動した。
 
ところが、3日目あたりからツイッター上で
発信者に対して、そしったり、あげあしを
とるような発言が目立ってきた。
売り言葉に買い言葉、そしられた方も
やりかえすから、言葉もきつくなってくる。
普段なら気にならない物言いでも
突っかかってしまう。
 
せっかくいい情報を提供してくれた方が
途方にくれたり、傷ついているのを見た。
双方とも悪気はないどころか、良かれと
思って言っているのは分かる。
 
無理もない、メディアを通じて
いろいろな情報が次々と入ってくるのだ。
悲痛なこと、元気が出るような話が
ランダムに飛び込んでくる。

 

情報を受け止める方は、いっぺんに
喜怒哀楽が大きなふり幅でゆらぎ
感情のコントロールが難しくなってくる。
その結果、過剰反応や感情の高ぶりが起きて
冷静に考えることができない。
だから、目につくものに八つ当たりしてしまう。
 
僕もあやうくそうなりかけた。ただでさえ
気が小さいのに、ものすごい量の他者の感情を
まともに受け止めてしまい、「何かしないと!」
「何ができるか!」と気が早ってしまい、落ち着かず
浮足立ってしまっている自分に気づいたのだ。
 
これはまずいと思って、いったんテレビや
ネットから離れた。気持ちをクールダウンさせ
平常心にもどろうと努めた。
昔、世界チャンピオンになった日本人ボクサーの
言葉を思い出す。
「カッとなりそうになったらまず深呼吸を3回して
心を落ち着かせます」
 
マーク・トウェインだって「頭に来た時は百まで数えよ」
と言っていたではないか。
だから深呼吸して気持ちを整え、必要な情報だけを
取ることにした。
当分、混沌とした状況は続く。そこで自分が冷静で
いられるよういくつかルールをきめることにした。
 
一つめ、平常心を保つこと。
感情の揺れが激しいと思考も言動も感情任せに
なってしまい、自分や他者を傷つけてしまう。
平常心を保つためにテレビやネットで前のめりに
なって情報収集しない。感情がバランスを
欠きそうになったら情報を遮断する。いざと
いうときに冷静に行動できるようにしておく。
 
2つめは 寛容になること。
内田樹さんのブログ<未曾有の災害の時に >を
参考にさせてもらった。いまは誰も責めずそしらない。

たしかに政府や東京電力、メディアの対応をみると

腹立たしくなることがある。
しかし、いま十分でないにせよ、それぞれが最善を

尽くしている。
 
マスゴミ呼ばわりされているテレビだって、
CMを流さず広告費収入をすっ飛ばして報道に努めている。
至らなかったことは後で検証してただせばいい。

いま文句や不満を堂々と叫んでいいのは、

被災地の人たちだけ。
 
ツイッターでも他者の発言にかみつかない。
不謹慎だ、自粛だと突っかかっている人もいるが、
思いは同じのはず。立ち向かう先は
他人のツイートではない。寒さや飢えに怯えながら
助けを求める被災者のことを想像しよう。
相手にするべきは彼らが直面している困難である。
 
また、感情に言葉をのせない。感情が高ぶって
いるからといって八つ当たりしない。
 
たしかに東京で買い占めに走る人たちには

呆れる。恥を知れと言ってやりたい。
しかし、官房長官やツイッター上でも

いろんな方々が「ストップ、買い占め」を

呼びかけている。事態の収拾を期待したい。
 

それに彼らとて普通の人々である。
買い占める人を引きずり出して吊るし上げても
気分が悪いだけだ。

 

買い占めた人の中には、いまごろ冷静になって

悔やんでいたり、自分を責めている人もいるだろう。

いま彼らを追いつめてなんになる?
 
3つ目は、いまとこれから自分が何をすべきか考える。
東京にいる身としては、いまは節電に努めること、
義援金に協力する、役立つ情報があればツイートする
ことくらいしか貢献できない。
あとは、普段通り仕事をして過ごす。
 
被災地の復興には時間がかかるし、次々と新しい
克服すべき課題が出てくる。そういう状況に
対して、この先自分が寄与できることを探る。
そのためのアイデアを考えたり、力を蓄えておく。
無理せずに自分ができることをやる。
 
以上の3点をこの状況における自分の行動指針としたい。
さらに色々な情報が飛び交って何を信じればいいか
分からないこともあるが、自分の直観にしたがうことにする。
 
それぞれ置かれている状況によって変わると
思うけれど、できればこの状況下での
自分のルールを決めた方がいいと思うよ。

最後に藤原新也さんの言葉(ShinyaTalk3/15 )を
お借りて、自分ががなすべきことの基本姿勢を伝えたい。

 
被災地の映像に向かって手を合わせるのもいい。
ツイッター上で祈りの言葉をつぶやくのもいい。
普段より節電を心がけるというのもいい。
コンビニに商品が入荷したら後の人のことを考えて
商品をなるべく残して行くのもいいだろう。
現地に赴いて木切れひとつも片付けるのもいい。
募金箱にコインを入れるのもいい。
献血をしたいと言った人がいたがそれもいいだろう。
 
そういったささやかな行為がこのあまりにも
甚大な絶望状況を救うとは言えない。

 

だが過剰なレスキューファンタシーに陥ることなく、
そして無力な自分を責めることなく、
ひとりひとりが冷静に身の丈に合った何かを
「する」ことこそが大事
なのである。
 

 
次回からはいつもの感じに戻ります(予定)。


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