私が子供の頃、昔々の情報の入手はテレビやラジオ、そして新聞であった。
というか、ほぼそれが情報の全てであり、その情報は全て「真実」であった。
言い方を変えれば、それら情報を「真実」であると思い込まされていた。
そして現在。
インターネットの普及により、各メディアが報じた内容を検証した情報が簡単に入手できるようになり、国民は情報の「真実」を様々な角度で得る事ができるようになった。
「真実」は、見る方向によって解釈が異なる事が多々ある。
それらを多方向より得られる事は、非常に大きな事であると思う。
さて。
ず~っと以前、かれこれ数年前のニュースであるが…。
テレビの各局がトップニュースで「電子タバコ、発癌性物質は煙草の10倍」と、まぁセンセーショナルな見出しと共に報じた。
研究機関が発表した内容によると、ある発癌性物質が紙巻煙草の10倍も検出された…との事で、その研究員が検証結果をコメントしていた。
当時、私は紙巻煙草から電子タバコへ移行した矢先だったので、ワイドショーのネタ…という軽いノリではなく、報道番組のトップニュースという重大さにショックを受けた事を記憶している。
しかし、テレビに映る検証映像を見て、すぐに首を傾げた。
本来の使用方法とは、掛け離れた状況で検証していたのである。
例えるなら、頭痛薬を2~3箱分一気に服用して、「体に異変を生じた、頭痛薬は危険だ!」と言っているような使用方法での検証だった。
そして私は、インターネットで事の顛末を調べてみた。
その検証には、電子タバコの使用方法すら知らない研究員が誤った使用方法でデータを出していたこと。
つまり、有害物質は「出るべくして出た」、もしくは意図的に「出した」と考えられる。
検出された物質(ホルムアルデヒド)の数値自体は、各都市の空気中の数値よりもはるかに低いこと。
つまり、電子タバコで「発癌性物質が!」と騒ぐのであれば、健康のために散歩している方が有害なのである。
ちなみに、焼き魚や焼肉は電子タバコなど比にならないほどの発癌性物質を出す、というか何かを焼けば必ず出る。
「焦げたものを食べると癌になる」と聞いた事はあるだろうか。
そう、確かに焦げたものを食べると癌になる。
マウスの実験で、実証されているのだ。
だから焦げたものは食べなちゃだめなのだ。
さて。
焦げたものは、確かに発癌性物質である。
この話で、最も重要な情報が抜けている。
「どの程度の量を摂取したら癌になるのか」という部分だ。
この情報が抜け落ちた状態で情報が拡散し、焼き魚に付着した焦げを一心不乱に排除した人も多いと推察する。
ちなみに、人間であれば焦げを1日に1トン程度摂取し続けると、癌になる可能性が高いようだ。
これは気を付けねばなるまい。焦げは1日1トンまで!
マウスに投与した焦げの量が、どれだけ過酷であったかは誰も知らない。
これは煙草のマウス実験にも通ずる。
4,000種類と言われている煙草の化学物質の中の、たった1種類の数値が高い、というだけで「煙草の10倍!」という言葉を強調。
しかしながら、確かに検証結果からは有害物質は検出されている。
これは間違いない。
限りなくゼロに近い数値であっても、「出た」という事実は事実なのだ。
街の空気、焼き魚、焼肉よりも数値ははるかに低いが、数値が「出た」という事実は変わらない。
それがたとえ、あり得ない使用状況で検証した数値であっても、だ。
これは疑いようのない「真実」であり、報道は「正しい」と言える。
報道とは、恐ろしいものである。
その報道の結果は、翌日に如実に現れた。
「昨日、テレビで電タバは煙草より危険だって報じてたよ!」
もう、うんざりするほど聞いたセリフだ。
煙草を経済的に、または健康のために止めるため、電タバに移行していた人達が一斉に煙草に戻った。
なぜならば、電タバより煙草の方が10倍安全だと報道してたから。
昨日まで、「嫌な咳や痰が出なくなったよ」と喜んでいた人が、「危険だから」と煙草に戻った。
昨日まで、「体が軽いし、飯もウマくなった」と言っていた人が、家族に止められて煙草に戻った。
昨日までに、20人以上の人が電タバで禁煙していたのだが、私を含め2~3人を残し、一斉に電タバを捨てた。
テレビを観て「煙草の方が安全!」と思って。
テレビを観た家族に強く「電タバは危険!」と諌められて。
皆、電タバから煙草に戻った。
そして私がどれだけ「煙草の方が有害だ」と説いても、誰も聞かないどころか呆れ返っていた。
「テレビで危険と報道されたのに、まだ電タバなんか持っているのか」と。
それから数カ月後。
電タバでは日本よりもはるかに先進国であるイギリスが、電子タバコに関する研究データを公表した。
「電子タバコは、煙草より90%以上も安全であり、禁煙医療に取り入れるべきだ」
面白い事に、この最新の研究結果を日本の報道機関は一切報じない。
テレビや新聞など、報道機関は半信半疑で見るべきだなぁ…と、私の中で確定付けた出来事であった。
私のこの記事は…無論、「真実」である。
しかし、どの方向から見た「真実」なのかは、諸兄の判断に委ねたいと思う。