*こちらで書いているお話はフィクションです。
登場人物は実在の人物の名をお借りしていますが、
ストーリーは作者の創作によるものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

26.




Side:Y




ダウンライトの丸い仄かな明かりをぼんやり見つめ、
おそらく俺は…いままで生きてきた中で、
一番幸せな時間を噛みしめていた。
俺の横で、肌を擦り合わせて眠るチャンミン。
その温もりに、俺は言葉に出来ない充足感を感じていた…


何となく、気乗りのしなかった同期会。
でも、俺はチャンミンが行くならと約束した。
同期の連中の下心や、ヨヌの良くない噂。
こんな奴らのことで、チャンミンが傷つかないよう…
俺はチャンミンをガードしようと決めていた。
奴らが席を外し、部屋を出たのを確認した俺は、
チャンミンを部屋に残してトイレに立った。
だが、それがよくなかった。
チャンミンは喫煙所でたむろする連中の話を聞いてしまって…
店から姿を消した。
荷物を取り、チャンミンの元へ向かった時には、
すでにチャンミンは店を出た後だった。
とりあえず俺はタクシーに飛び乗り、
チャンミンのマンションへと向かった。
駅へと追いかけることも考えたが、
何よりも確実にチャンミンを捉まえたかった。
予想通り、まだチャンミンは帰っていない。
マンション入り口で待つこと30分、
雨も強くなってきて、チャンミンが濡れていないか心配だった。


「こんなことして…また余計なお節介だって言われるかもな。
でも、それでもいい。
もう、これ以上…チャンミンの悲しい顔は見たくない。
想いが届かなくてもいいから、伝えたいんだよ…」


軒先から落ちる大きな雨粒を見上げながら、
俺はひとり呟いた。
静かな住宅街の夜道に、雨音に混じって誰かの靴音が聞こえた。


「シム!」


チャンミンは驚いていたけれど、
次の瞬間、傘を放り出して俺の胸に飛び込んできた。


「ごめん…ごめんね…ごめん…ホントに…ごめん」


何度も何度も俺に謝って…
泣きじゃくるチャンミンを見たら、
俺は何も言えなくなって…
冗談めかして、「バカだなぁ…泣かなくていいよ」
って言うしかなかった。


チャンミンは雨に濡れた俺を部屋に上げてくれた。
1LDKのこじんまりした部屋だけど、
シンプルで清潔感があって…几帳面なチャンミンらしいと思った。
チャンミンは、俺の顔を見て泣き出したわりには、
すっきりとした表情をしていた。
高3の時、ジェノにフラれた時のチャンミンは、
この世の終わりのような顔をしていた。
それに比べれば、まるで何事も起きなかったかのように穏やかだった…


「ショック…だったよな。あんな風に言われて」


俺がそう訊ねても、


「こうなるのは分かりきっていたから。
いまとなっては、ヨヌの本心がわかってよかった。
これでもう、振り回されずに済むから」


薄く笑って、チャンミンはそう言った。
本気なのか、強がりなのか?
俺はチャンミンの本心が知りたくて、
キッチンに立ったチャンミンを、うしろから抱きしめたまま…
この10年の想いをチャンミンにぶつけた──
無謀だと思ったけれど、言わずにはいられなかった。
俺だって、もしチャンミンに手ひどくフラれたら…
しばらく、いや永久に立ち直ることは出来ないかもしれない。
会社も辞め、チャンミンの前から姿を消す覚悟もしていた。


「チャンミンが、好きだ」


ついに、言ってしまった!
そして…その答えが、いまの俺たちだ。
一糸纏わぬ姿、生まれたままの姿で一つの毛布に包まっている。


「帰らないで」


なんて…チャンミンから言われた時は、
心臓が止まるかと思ったほど、うれしかった。
チャンミンは俺をベッドに誘い、甘く唇を重ねながら…
そうなると、もう躊躇ってなんていられない。
俺はチャンミンのシャツのボタンに手を掛け、
ひとつひとつ、丁寧に外していった。
露わになったチャンミンの白い肌が、少し震えていた。


「あ…あ…」


俺はチャンミンの首筋から鎖骨にかけて、
キスの雨を降らせた。
ゆっくり、ゆっくり…大切に…
チャンミンの胸の蕾をやさしく指でなぞり、
唇に含んで舌の上で転がした。


「んふっ…!」


感じているチャンミンが可愛かった。
俺だって、男同士のセックスは初めてだから…
多少なりとも緊張はした。


「チャンミン、震えてる。こわい?
いいの?このまま…先に行っても?」


「ちょっとだけ…ほんの少しだけ…こわい。
僕、恋人なんていたことなかったから…
こういうシチュエーション…初めてで」


「ああ、そっか…無理にしたら痛いよな?
今夜はこの辺にしておく?チャンミンのこと、痛くしたくないから」


「そ…そんなこと…言わない…で…」


チャンミンは消え入りそうな声でそう言うと、
俺の左手を掴み、自分の後ろへと誘った。


「チャンミン?!…これって…」


そこはもうぐっしょりと濡れていて…


「こんなこと、言いたくないけど…
僕、自分で慰めることはしてるんだ。
たぶん、大丈夫だと思う。でも…ユノの、大きいから…
挿入るかどうか…わからなくて。
もっと…解さなくちゃ…無理かも…」


色っぽい言葉を、頬を赤らめて恥じ入るように言うチャンミンを見て…
俺は本能が抑えきれなくなってしまった。
チャンミンが可愛い。愛おしくて仕方がない。自分だけのものにしたい…


「チャンミン、俺にもさせて?」


「えっ…ああン…ユノっ…!」


俺はチャンミンの後ろにゆっくりと指を挿し入れた。
チャンミンの言葉に反し、後ろはぐんぐん指を飲み込んでいく。
熱い…指先にチャンミンの熱を感じる。
俺が指を動かすと、好い所に当たってチャンミンはのけ反った。


「くぅんッ!ユ…ノ…」


「もう大丈夫そうだよ。挿入るよ?やさしくするから」


俺の勃ったしるしが、そっとチャンミンの中には挿入っていく。


「ああっ」


「チャンミン、ゆっくり息をして…そう。
体の力を抜いて…俺にしがみついて…行くよ」


チャンミンの、滑らかで絹のような肌が俺に吸いつく。
ゆっくりと、そして徐々に激しく…
俺はチャンミンを抱きしめ、夢中で腰を振った。


「はあ、はあ、はあ…チャンミン…っ」


「ユノっ…イキそう…」


今まで経験したどのセックスよりも…
しるしに吸いつくようなチャンミンの体に感じていた。


「チャンミンとひとつになりたい──」


汗と涙、そして互いの精にまみれながら…
俺たちは何度も達し、飽きるまで抱き合った。


 

 

*残り話数が少なくなりましたので、このまま最後までノンストップで更新します。

「ちょっと休憩」はお休みします。

 

 

 

 

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