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恋愛小説『Lover's key』

#20-1 幸福感(shinichi's side)






由愛の家を出たのはまだ日も昇っていない朝の5時過ぎ。


冬の朝は流石に寒くて、ハァと吐く息がうっすらと白い。


ヒヤっと冷たい外気に肩をすくめながら歩いていると、ぼんやりとしていた思考や眠気も少し醒めた。





───とうとう由愛にプロポーズ、、、したんだよな。俺。





そのときの状況を思い出しながらのろのろと駅までの道のりを歩く。


YESの返事をもらうまで、本当に気が気じゃなくて。


結婚して海外に住もうなんて、、、由愛もまさかそんなことを言われるとはおもわなかったと思う。


幼稚園に就職する事も決まっていたから余計に戸惑うのは当たり前だ。


それなのに、よく考えた上で当日中に了承してくれたことがすごく嬉しくて。


「宜しくお願いします」と言われたときには、心が幸福感でいっぱいになって、感極まって涙が出そうだった。




里香の死が原因で、俺の心は一度死んでる。


それをここまで生き返らせてくれたのは由愛で。




プロポーズの一件で、俺の心の傷が完全に癒えた気がした。


もう二度と、愛する人は失いたくない。何があっても由愛だけは守り抜く。


ここのところ忙しくて構ってやれなかったから、由愛が不安を抱えてたことに気づいてやれなくて。


でももう。これからは不安になんかさせない。絶対に俺が幸せにしてやる、と。


結婚の話をしながら、そう強く決心したんだ。




 駅に着くと、始発を待ってる人がポツリポツリと居て。


客層は、俺のようなスーツを着たサラリーマンや大きなスーツケースを持った女性、カップルなど様々だ。


皆、それぞれに色んな過去があって、未来があるんだろうななんて考えると感慨深いものがある。


色んな人生が交差する中で、俺は里香に出会い、失い、そして由愛と出会った。


星の数ほど居る人間が出会う確立を考えると、こうして結婚まで辿り着くことができたたった一人の女性に運命を感ぜずにはいられないよな。。。


 電車に揺られながらそんなことを考えていると、あっという間に自宅の最寄駅に着いてしまって。


そこから歩いて帰って、結局自宅に戻ったのは明け方の6時だった。


鞄から玄関の鍵を取り出し、静かに開ける。


平日はいつも早起きな母だけど、土日はゆっくりで7時過ぎにならないと起きない。


俺は、家族を起こさないように靴を脱いでそっと階段を上がった。


自室で部屋着に着替えて、すぐさまベッドに横になる。


眠気は戻ってきたけど、目を瞑ってもしばらくは意識がハッキリしてて。


なんとなく由愛のことを考えずにはいられなかった。


これから自分の親にも結婚の話をしたり、由愛の母親にも挨拶に行ったり…。仕事も忙しいけど、プライベートも忙しくなりそうだ。


ああ、、、そうだ。婚約指輪も買わないと。。。


本当は指輪を渡しながら「結婚してほしい」と言うべきだったのかな?


プロポーズなんて初めてで、、、順番なんてよくわかってなかったけど、、、。


クリスマスのときまで、待てばよかったか。。。


いや、でも今後の準備などを考えるとそれじゃ遅いな。。。


タイミング的には、やっぱり“昨日”で正解だったと思うし、変にムードなんて作っても俺らしくない。


由愛もOKしてくれたし、昨日の夜から今朝にかけてのこの喜びは、一生忘れないだろうな、、、。


…なんて。幸せに浸っていたら、知らず知らずのうちに眠ってしまっていた。



*******



RRRR~。RRRR~。RRRR~。


携帯の着信音が何度も何度も鳴っている。


始めは遠くから聞こえてるように感じたけど、意識がハッキリするうちに俺の携帯が枕元で鳴ってるのに気づいて急いで通話ボタンを押した。


「もしもし…」


声が少し掠れ気味で、寝ぼけて目もまだうまく開けられない状態だったけど、受話器から聞こえてきた声の主に驚いて俺は完全に目が覚めた。


「センセ。もしかして寝てたの?今日、カテキョ休みだっけ?」


輝の呆れたような声が耳に飛び込んできて、俺はベッドから飛び上がった。壁掛け時計に目をやると、昼の1時20分過ぎで。



……ヤバイッ。


1時からの予定だったのに。完全に寝坊したっ。


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