妄想物語後輩編の続きです~。
今日で完結なのであとちょっとだけお付き合いくださいませ。
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「お邪魔しま~す…」
向井くんに案内されるまま、私はその『店』に足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ~」
向井くんはものすごく上機嫌だ。
「っていうかこんなの聞いてないし~!これじゃ全然お礼にならないじゃん」
私は文句をぶーたれる。
「まぁまぁ。いいじゃないですか♪」
もう何を言っても効果はないようだ。
私は覚悟を決めて、部屋の中へと足を進めた
部屋は小奇麗で、向井くんのセンスがうかがえた。
「きれいにしてるんだね」
「いつもはもっと汚いですけどね。あんまり片付け得意じゃないんで」
向井くんはそう言って笑った。
こちらにどうぞ、と勧められたテーブルにはすでに赤ワインが乗っている。
「本格的じゃな~い?」
と私が驚くと、
「今用意しますから」
と向井くんはキッチンに向かい、慣れた手つきで最後の仕上げに取り掛かった。
とてもいい匂いが漂ってくる。
実はおなかがペコペコだった。
「さぁどうぞ」と向井くんが次から次へと料理を運んでくる。
あっという間にテーブルは目にもおいしい料理の数々で埋まった。
「すごい…」
思わず私の口から漏れた素直な感想。
向井くんが出してくれた料理は、本当にお店に並んでいてもおかしくないようなものばかりだった。
「これ…全部向井くんが作ったの?」
「料理、好きなんです。学生のころは飲食店でバイトもしてて」
「うわーショック…。負けるわ~。私なんてほんと『ザ・家庭料理』みたいなものしか作れないし」
「いや、でも俺も和食が一番好きですよ。今日は赤ワインに合わせてちょっとがんばってみましたけど。あ、ワイン開けますね」
向井くんが赤ワインに手をかける。
コルクを抜く姿がまたとても絵になっていて、私はどこぞの高級料理店に来ているかのような気になっていた。
「乾杯」
「乾杯」
ワインも、向井くんの料理も、どれも本当においしくて、私はこの雰囲気に酔ってしまいそうだった。
「それにしても先輩、お酒強いですよね~」
「そうでもないよ~。特に赤ワインは酔うのが早い!私が一番好きなのはー」
「「芋焼酎」」
声がきれいにハモり、二人で顔を見合わせて笑った。
「なんで知ってるの~?」
「先輩いっつも頼んでるじゃないですか」
「そんなに頼んでたっけ…」
「頼んでます」
「…。向井くんだってお酒大好きなくせにー。さっき見ちゃったよ、あっちの方、バーカウンターみたいになってる」
「あ、バレました?」
「バレバレですー」
お酒が入ったこともあり、少しテンションの上がった私たちはたわいのない会話を延々と楽しんでいた。
そのとき、私のカバンの中で携帯が鳴り出した。
背面ディスプレイに映し出された発信者の名前、それは、ちょうど一週間前に別れを告げられたあの上司だった。
私の顔がこわばったことを向井くんは見逃さなかった。
私が動けなくなっている間も、携帯は鳴り続けていた。
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続く。
すみません、料理…逃げました。(汗)
向井さんが何を作ったのか、みなさんのご想像にお任せします。笑