私が気持ちをしっかりと! | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

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ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

昨日の撮影でゆいは、卓人から裏切りとも取れる発言を耳にし、ひどく落ち込む。しかしそんな時でも引っ越しの準備は進めなきゃならない。小百合を連れて不動産屋へ行き、契約を済ませた。もう一つ大事なのは引っ越し業者への連絡だ。以前から先生がアポを取ってくれると言ってくれたので、お言葉に甘え、連絡をつけてもらった。そこに小百合から先生に電話が掛かり、ゆいはその内容を知っていたが、先生が出ていくゆいを引き留め一緒に話を聞いていた。

「おはよ~♪・・・うん、うん♪うん!いいの?あ~ん♪大丈夫、ゼミが終わってからで十分だから。待ってるわ・・・は~い♪」

電話の内容はゆいも分かっているので先生のリアクションだけをじっと見ていた。

「ゆいさん、小百合ちゃんのこと知ってたの?」

「はい。自分から連絡してと言っておいたので。ありがとうございます。今から現場入ります。失礼します」

今の電話のことは後で小百合からLINEでも来るだろうと思い、ゆいはそのまま現場に入った。

現場の隅に置かれた、昨日着るはずだった数えきれないほどの衣装。ゆいは気持ちを入れ替え、今日改めて取り直す気持ちで衣装を選んでいた。そこにスタイリストさんとメイクさんが来ては昨日の話になり、どうしようかと話し合う。

ゆいが衣装を選び、スタイリストさんが小物を考え、メイクさんは髪型をアドバイス。あまりにも似合ってるチョイスに、ゆいは何度も素敵❤と褒める。

こんな時は決まってカメラマンは『思ってるのと違う』と上から目線で言ってくるので、ゆいの感想が今一つ受け入れられない顔をされた。

「ん?私何か言いました?」

「いえ。葉山さん、撮影が始まった日から私たちの案を全部採用してくれたのでちょっと驚いてしまって」

「同じ女性だから感性が同じってこともあるし、撮ってみて違うなって思えば相談で替えればいいし」

写真集の最後のページにはスタッフ全員のクレジットが入る。だからこそ全員が一丸となって作り上げたい。そのことだけはもう一度伝え、解散。

ポケットのバイブに気付き、小百合からだと思ったゆいは一人隅っこでスマホを開けた。

「あっ❤やっぱり小百合からだ」

結局、小百合は今朝話した通り、生協には行かず講義室近くの場所で電話を掛け、先生と話をしてゆいにLINEで伝えてくれた。

『先生に話したら、待ってるって言ってくれた。だからゼミが終わったらダッシュで行くね』

ゆいも一緒に話を聞いていたことは話さず、待っていることだけを伝えた。

さちに呼ばれ、ゆいは卓人と顔を会わせる。驚いたことに、今日はいつもの取り巻きがいない。どうしたのかと思うがさすがに昨日あんなことがあればそりゃ引くだろう。一緒に来たのはマネージャーと事務所のお偉いさんのみ。

昨日の出来事を聞いた事務所の部長とやらがゆいに名刺を出し謝罪をしてきた。もちろん、隣には卓人がいる。ゆいも慌てて名刺を出し撮影を再開することを話した。

そして、今日は別件で別の会社が視察に来ることも話し、昨日あったことは漏らさないようにお願いをした。

部長は先生に会わせてほしいと言い部屋に通すと、ゆいは卓人と二人で話し合った。自分を踏み台にされたのだから気分は今も良くない。でもこのままでは何だか神崎妖花に負けた気がしてならない。それもゆいには不本意だった。

 

「卓人君、今から私の信念を話すね。それでどうするか決めてくれるかな?」