今日小百合は、ゆいが早朝ロケで千葉まで行っているためバス通学。
バスに揺られながら連日忙しいゆいのことを思う。
ゆいの仕事に対する姿勢を見ていて、ゆいはこの仕事に誇りをもってるんだと改めて思うが、きっと大変な思いをして入ったであろう大学も辞めてしまうほどの行動は小百合には出来ない。
ゆいは、佐伯さんが自分のところで働いてもいいと言ったから大学を辞めたって話してくれたが、仮に小百合が先生から自分のところで働いてもいいって言ってくれても、言ってくれたけど、大学を辞めてでもとは思わなかった。
ゆいが辞めた直接の理由を話してくれたが、ゆいの勢いに何もできない小百合は、自分が思う将来がちっぽけなものに感じてしまう。
ゆいのことがあるので誰にも相談できない小百合は、このままバスを降りないで遠くへ行ってしまいたいと思ってしまう。
結局バスを降りることさえ勇気がない小百合はゆっくりとステップを降りユイたちに挨拶した。
2時間かけて現場に着いたゆいたち。今日の主役の卓人御一行はまだ到着していない。さすがにメインよりも後に来たんではシャレにならないので、今のうちに担当さんたちと合流し、今日の流れを話し合った。
ここは砂浜に近い場所。今日ここでは半日撮影となり、ゆいは今のうちにと指輪を外しネックレスに通しておいた。チラッと見ていたさちは、今日は探さなくていい♪と笑った。
「しかし、時季が過ぎると人が少ないね。もうサーファーくらいしかいないじゃん。それともここだけがそうなの?」
「そうなのかもね。スタッフさんが探してくれた場所だから」
ゆいたちは三角テントに機材を置き、すぐに始められるように準備に入った。
少しだけ時間に余裕ができたゆいは、気になっていた小百合からのLINEにやっと目を通した。
『これ読む時はもう撮影が始まってるかな。手紙は私が書きたかっただけだからいつ読んでくれても構わないよ。気に掛けてくれるのは嬉しいけど、仕事に集中してください!』
『もう一度言う。事故やケガのないように』
『帰ったらお話いっぱい聞かせてね、楽しみにしてるから♪』
小百合はことあるごとに事故やケガのないようにと言う。多分手紙にも書いてあるだろう。ちょっと強い口調言われた時は『分かってるって!』と思っていても、そんな時に限って転び、服を濡らす。そして小百合が洗ってくれる。まるでそれがルーティンのように。
でも、それだけ小百合は気に掛けてくれてるんだと思うと、俄然やる気が漲る。
返事を送りたいがやっぱり時間がない。いつものスタンプを送り現場に入った。
朝からカップラーメンという、なんとも力の入らない物を食べ、胃がおかしい小百合はユイたちと別れた後、今日も生協へ。昨日買い忘れたお菓子のアソートを見つめ手に取るも『やめた』と言って店内を物色することなく、そのまま講義室へ行った。
「おはよ~さん」
今日も亜衣と弥生に挨拶し、隣に座ってはタブレットや教本を出しスマホをチラ見。
「小百合ちゃん、時計替えたの?カッコいいじゃん。どこの?」
「これ?BabyG。どうしても欲しくてさ。ハイブランドじゃないけど」
すると、会話を聞いていた隣の女子が気分の悪いことを聞いてきた。
「彼氏から?まさか自分で買ったとか?」
「えっ?自分で買ったけど・・・?」
「あ~そうなんだあ」
以上。
自分で買うことは恥ずかしいことなのか?それでも小百合は構わない。ゆいと色違いのお揃いだから。何だか癇に障った小百合を亜衣と弥生は一生懸命なだめてくれた。