天気がいい日曜日。これから小百合の買い物に付き合ってもらうため、ゆいを駅前のデパートへ連れて行く。問題は着ていく服だ。小百合は穿きたかったパンツを諦め、ゆいが選んでくれたスカートを穿いていくことにした。そして鏡でチェックする小百合にゆいが気付いた。
「あれ?小百合♪服同じ色じゃん。偶然だけどスカートの形も似てるし。小百合~もしかして??ね~もしかしてそう?」
小百合が合わせたと知ったゆいは、嬉しそうに自分の服を直した。後半の不動産屋はまた今度にしてどこか一緒に歩きたい。しかし今日は用事が済んだら真っすぐ帰って家でゆっくりすることになっている。
「ゆい、今日アパート探しに行くじゃん。良い場所だったら即決ってこともあるの?」
「出来れば数件回ってからだけど、希望してることが合致すれば。小百合もここだけは譲れないってことがあるなら言ってよ。一応、冷蔵庫と洗濯機、ベッドの幅は測ってあるから」
「さすが!うん」
小百合も希望や要望はあるが、行ってみてからということで、特に口にはしなかった。
「小百合、そろそろ行くよ」
とりあえずの行先はデパート。出発すると、ゆいはナビの画面をテレビに替えた。すると小百合はFMラジオにしてほしいと言う。
「そう?小百合、タッチして変えて」
しばらく聴いてると、耳にしたのは以前流れていたカッコいい曲だった。多分坂道系だと思いながら。
「小百合?これ知ってるの?」
「あ~これ?欅坂46のサイレントマジョリティーっていうの。ほらっ言ってるでしょ?ダンスがすっごい激しいの。あっ、今日ガソリンは?寄るなら言って。私が出すから」
「まだいいよ。ありがとね」
車で行けば駅まであっという間。デパート直結の駐車場へ入り、車を止めた。
デパートはゆいがスーツを買いに来た以来。休日の店内は賑やかで、その雰囲気だけでも購入意欲が湧く。
小百合はゆいと時計売り場へ。これから高い買い物をするのに、小百合は野菜を買いに来たような感じで緊張感がない。逆に『選ぶ』重大な任務を与えられたゆいの方が緊張する。
「小百合~逆じゃん」
「何が?ここだよ」
小百合が指差した時計は、BabyGのメタルバンド。少々小さめの文字盤で小百合の腕にはピッタリの大きさだ。
出てきた店員さん、その時計を見てはこのシリーズ最後のモデルだと言い、やっぱり購買意欲を掻き立てられる。そう言われるとゆいも気持ちが揺らぐ。そんな予算などこれっぽっちもないのに。
「どっちにしようかなって」
「そうだね~どっちもいいから」
ちなみに、ゴールドかシルバーの二択。
ショーケースから出してもらい、腕にはめてみる。やっぱりメタルバンドはカッコいい。ゆいもだんだん欲しくなってきた。今ゆいが使っているのは黒のBabyG。こういった時計は買ったことがない。
ブレスレットはピンクゴールド。だったら時計はシルバーがいいのでは?と言ってみる。
「これから長いこと使うんだったらシンプルな方がいい。どんな服にでも合うと思うよ」
ゆいの言葉に小百合は即決。シルバーの時計を買うことにした。
「そしたら私、こっちのゴールドの時計を・・・」
もちろん小百合はビックリ。こんななずじゃなかったゆいもビックリ。
「ありがとうございます。お会計は・・・」
「二つ一緒にカードで」
「ゆい、ダメだって」
「まさか。後でちゃんといただきます。カードはポイントが付くし。欲しかった理由は後で・・・」
ゆいはカードを提示し、一括払いでお願いした。
衝動買いかもしれないが、いつかは買うつもりだったのでいいきっかけが出来た。と、思いたい。