本書は7月に読んだ「三千円の使いかた」の登場人物・小森安生が本書を持っていて、興味がわいた。

 

横しぐれ  (著)丸谷才一

 

丸谷才一といえば・・・歴史的仮名遣い。

「思ひ出さなかつた」、「どういふわけか」、「思ふ」、「早く言へばさうなる」、「三時間くらゐ」・・・。

小さな「つ」、つまり促音がないのになかなか慣れない。

また、「昼」ではなく「晝」が使われていて。一瞬、考えてしまった。

というハードル(?)を乗り越えられるほど、惹きつけられて、ぐいっと読み進められた。

 

私は文庫でなく単行本(1978年7月発行の第6刷のもの)を図書館で借りて読んだ。

本書には、タイトルの「横しぐれ」を含め4作が収録されている。

 

「横しぐれ」は、主人公の亡くなった父とその友人が道後の茶店で「てくてく歩いて廻る乞食坊主」と酒を飲んだという旅の思い出話から、主人公はその「坊主」は種田山頭火ではないかと考え、様々な資料にあたったりするなどしてその仮説を証明しようとする。推理小説のように引き込まれる。

この謎解きだけでなく、主人公が子どもで気づかなかった家庭の秘密も明かされていき、幾層もある物語だった。

 

「だらだら坂」は、男子浪人生が主人公。主人公が3人組の不良(?)に絡まれる短編。昔の18歳って、けっこう「老けている」というか・・・。

 

「中年」は、中年の新聞記者が主人公。田舎から兄が上京したり、昔家庭教師をしていて現在は俳優になった藍川庸介との関わり・・・特に大きな事件などは起こらないが人と人との関係についてじんわりと考えさせられた。

 

「初旅」は、怖かった・・・。こわーい話である。