陰の季節 (文春文庫)/横山 秀夫
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 本日ご紹介するのは、『クライマーズ・ハイ』でお馴染みの横山秀夫さん作『陰の季節』です

 警察を舞台にした小説ですが、他の警察小説とは趣が異なっています

 その最大の理由は、刑事が主役ではないことです

 この作品の中で描かれているのは、警察組織の中の出世争いです


 読了して最初に感じたのは拒絶感でした

 出世争いというのは、どんな職場でも起こることです

 大きな組織になり、序列が設けられればなおさらです

 しかし、警察という組織には、似つかわしい言葉ではないように思うのです

 というよりは、そうあってほしくないという願望かもしれません


 国家の治安、国民の安全を図る警察に、私は公平と高潔さを求めています

 そんな警察の中で、功を争ったり、仲間同士陥れ合ったり、弱みを握って圧力をかけたり、保身に走って裏工作に奔走したりしているなんてことは、想像もしていないことでした

 この作品は勿論フィクションです

 しかし、モデルが存在するのではないかと疑いたくなるくらいにリアリティと説得力があります

 綿密に描かれた人間関係と心裡から、この話が実話であると告げられても驚きはしないでしょう

 この作品の中で語られたようなことが実際に起こっていないとは言い切れませんし、これから起こると容易に想像されうることです

 これはとてもぞっとする話です

 だからこそ私は、この作品のないように拒絶感を感じるのでしょう

 やっていいことと、やってはいけないこと

 そんな基本的な道徳観さえ崩壊させる人間の欲望を垣間見たような気分になり、恐ろしくなりました


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