- 8の殺人 (講談社文庫)/我孫子 武丸
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今回ご紹介するのは、我孫子武丸さん作『８の殺人』です
現在放送されているＮＨＫ『探偵Ｘからの挑戦』で、原作を担当されている作家さんです
番組の熱心な視聴者である私は、原作者に我孫子さんの名前が連なっていたことがきっかけで、本作品を手に取りました
『８の殺人』は安孫子武丸さんにとってデビュー作にあたるミステリ小説です
ミステリは堅苦しくて難解、というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、この作品はユーモア小説といってもいいでしょう
作風は、赤川次郎さんの作品を思い出してもらうと、そう外れてはいないと思います
主人公が兄弟、というのも要素が似ています
警視庁に奉職している長男・速水恭三と、ミステリマニアの次男・慎二＆長女・一郎（いちお、と読みます）の三兄弟が事件の謎に挑みます
真面目だけれど女性に縁のない恭三と、彼をサポートするこましゃくれた弟＆妹、という構図は、『三毛猫ホームズ』シリーズの片山兄妹を思い起こさせます
兄弟同士の軽妙なやり取りに面白味がありますが、勿論本格ミステリ小説です
『８の殺人』で取り扱われている事件は、所謂「館モノ」です
上空から俯瞰すると「８」の字に見える屋敷が舞台です
８の字の中央部分に当たる渡り廊下で、８の字屋敷に住む蜂須賀菊一郎が殺害されているのが発見されます
凶器はボウガン
目撃証言があり、ボウガンは蜂須賀家の使用人の息子・矢野雄作の部屋から発射されたようです
しかし、犯行当時、雄作は就寝していたと供述し、犯行を否認します
その上、蜂須賀家の令嬢・雪絵は、雄作は犯人ではないと主張するのです
美しい雪絵の必死の訴えに絆された恭三は、事件の再捜査を始めます
果たして、殺害にはどんなトリックが使われたのでしょうか
浮かんでは消える仮説
そして更なる犠牲者が…
速水兄弟が導き出した結論は？
犯行には８の字型の屋敷という舞台装置を利用したトリックが用いられているのですが、このトリックは、むしろミステリを読み慣れている方のほうが引っかかるように思います
思わぬ推理展開に驚かされました
この作品に興味を持った方には、他にも次の作品をおススメします
まずは冒頭でも触れた赤川次郎さんの『三毛猫ホームズ』シリーズ
このシリーズは既にたくさんの作品が発表されていますが、１巻読みきりなので、どの作品から読み始めても大丈夫です
ですが、ここはやはり第１作『三毛猫ホームズの推理』
でしょうか
個人的にはヨーロッパ旅行編の『三毛猫ホームズの騎士道』『三毛猫ホームズの幽霊クラブ』『三毛猫ホームズの登山列車』『三毛猫ホームズの歌劇場』が大好きです
また、佐々本家の三姉妹が活躍する『三姉妹探偵団』
シリーズも明るく軽妙なタッチで描かれた作品であり、『８の殺人』に全体的な雰囲気が似ています
それから、刑事事件を扱った作品ではありませんが、小路幸也さんの『東京バンドワゴン』
は家族で一致協力してご近所で起こった身近な謎を解明していく作品で、ほのぼのとしたあたたかさがあり良作です
本選びの参考にしていただけたら幸いです