ST警視庁科学特捜班 緑の調査ファイル (講談社文庫)/今野 敏
¥600
Amazon.co.jp


 STの色シリーズ第4弾『緑の捜査ファイル』のご紹介です

 『緑の捜査ファイル』の主役は結城翠という女性です

 結城はSTの物理担当で、音響学が専門です

 本当は潜水艦のソナー手になりたかった彼女ですが、閉所恐怖症のために断念し、科捜研に奉職したという変り種です

 閉所恐怖症のせいで、彼女の服装はいつも露出過多

 出るべきところは出て、締まるべきところは締まったナイスバディの彼女は、いつも深Vネック&マイクロミニで現場に現れるので、現場の捜査員たちは捜査より彼女が気になって仕方ありません

 しかし、現場で彼女の噂話をしようものならたちまち彼女に聞こえてしまいます

 結城の最大の特徴は地獄耳

 小さい音や遠くの音を聞き取るだけでなく、人間には聞こえない領域の高周波・低周波まで聞こえてしまうという特別製の聴覚を持っているのです

 人間の鼓動音を聞き取ることが出来るので、黒崎(STのメンバーの一人)とあわせて「人間ポリグラフ」(嘘発見器)と呼ばれています


 鋭い聴覚を持った結城が活躍する事件はバイオリンの名器・ストラディバリウスの盗難事件です

 件のストラディバリウスは世界をまたに掛け活躍するバイオリニスト・柚木優子の所有物です

 ストラディバリウスは、柚木の宿泊するホテルからリハーサル会場に運ばれ、演奏を終えた後、イタリア人ボディガードによる厳重な警戒の上でホテルに戻されたはずでした

 しかし、ホテルに戻ってバイオリンケースを開けてみると、ストラディバリウスではない別のバイオリンが収められていたのです

 ストラディバリウスといえば、バイオリンの中でも名器中の名器

 時価数億は下らない高価なものです

 警察は威信を賭けて捜査に乗り出しますが、犯行手口が不明のまま進展しません

 そんな中、柚木のホテルの部屋で殺人事件が発生します

 ホテルは内側から鍵がかかった状態でした

 事態は混迷を極め、捜査も難航

 しかしSTの面々はある疑問点から事件解明の糸口を見つけます


 本作では、翠の人間離れした聴力が事件を解決する鍵になります

 人間離れした、と簡単に書きますが、その本人のいる音の世界というのは一体どういうものなのでしょうか?

 周りに始終音が溢れているだけでもうるさく感じるでしょうし、その上その音に「意味」がある(つまり会話など)と知らなくてもいいことまで聞こえてしまってうるさいどころの話ではないのではないでしょうか?

 私ならきっとおかしくなっちゃう

 でも、その聴力を活かして音響学を極めた翠

 その精神力に感服です

 高飛車な言動が多い翠ですが、その裏にはたくさんの苦悩が潜んでいたようです


 本作の見所は、音響に関する知識ともう一つ、クラシック音楽に関する薀蓄です

 特に物語の最後、クラシックコンサートの情景描写にはかなりのページを割いています

 クラシックファンには堪らないのではないでしょうか?