マイナークラブハウスの森林生活―minor club house〈2〉 (ピュアフル文庫)/木地 雅映子
¥651
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 前作『マイナークラブハウスへようこそ!』にすっかりはまり、速攻で第2作目『マイナークラブハウスの森林生活』を購入してまいりました

 この作品の魅力は、胸いっぱいの青春にあると思います

 高校時代、箸が転げても可笑しかった日々―――

 特にキラキラした出来事があったわけではないけれど、毎日の些細なことが楽しく思えました

 そして、表面上は面白おかしく生活していても、その裏側では人の存在の根源に関わるような深遠な苦悩を抱えていたりしました

 感情のふり幅が大きく、ちょっとしたことで笑い、ちょっとしたことで悩みましたっけ…

 そういう青春の光と影を思い起こさせる作品です


 『マイナークラブハウス』は短編連作集で、作品ごとに主役が変わりますが、中心人物はいつも畠山ぴりかという少女です

 ぴりかは変わり者揃いのマイナークラブハウスの中でも図抜けた奇人変人です

 天然ボケというだけでなく、言動は無邪気な幼子のよう

 面白いこと賑やかなことが大好きで、カエルの着ぐるみやピエロなどの扮装を好み、パワフルでテクニカルなギタリストでもある畑ドロボー

 …無茶苦茶なキャラですよね(笑)

 しかしぴりかは皆に好かれています

 その理由は、独立独歩を貫く生き方にあるのではないかと思います

 それは人に後ろ指を刺されようが自分の好きな道を行く、とかそういうことではなくて、ただ単に人に甘えないということです

 第2作『マイナークラブハウスの森林生活』で断片的に明らかになっていきますが、ぴりかは母親との確執と実兄を亡くしたトラウマを抱えています

 母親と二人暮らしの今、ぴりかは行き場を失っているといっても過言ではありません

 しかし、ぴりかは親友の福岡滝に対してさえも弱音を吐きませんし、甘えません

 自分の家庭環境のことはおくびにも出さず、たった一人で雄雄しく立ち向かい、皆の前では元気に振舞います

 その痛々しさと不羈奔放な生き方とが主役たちの心の琴線に触れるのでしょう

 ぴりかの問題を考えることで、己を省みることになります

 ぴりかを通して惹起される感傷が内省に繋がってもいます

 突拍子もないバカ騒ぎをしながら、諸問題に苦悩する…

 そのギャップはリアルで、読者を惹きつけて止みません


 この作品は本当に面白い

 今年の一押しです

 文庫ですのでお値段も良心的ですし、スペースもとりません(笑)

 是非ご一読を!


 猫好きの皆さん、猫が主役のお話も収録されています

 ちょっとハードボイルドな素敵にゃんこです

 読んでみてにゃ!