キノの旅〈3〉the Beautiful World (電撃文庫)/時雨沢 恵一
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 すっかりはまってしまった『キノの旅』第3弾です

 価値観、倫理観、常識といったものを再考させられる話です

 普段私たちが常識といっているのは、私たちが暮らすコミュニティ内だからこそ有効であることを強く認識させられます

 キノとエルメスが旅して回る国々は私たちの常識からは考えられないような価値観を持っていますが、それは外部の人間だから言えることであって、私たちの暮らしも別のコミュニティの人から見れば普通じゃないのかもしれないですね

 ここで暮らしている私にはどこがどうとは意識できないのですから、厄介です

 でもキノは気づいてしまった

 そのお話は第2巻に収録されていますが、その気づきがあったからこそキノはその国の考え方に対して自分の常識を振りかざすことをせず、受け入れ、受け流すことが出来るのでしょう


 第1話「城壁のない国」

 集団が結束していれば、国土がなくても国家として体裁を保てるのかもしれないですが、 国民を結びつける手段がおぞましいと思いました


 第2話「説得力」

 おそらく、キノが強くなったわけのお話

 各話に度々存在だけ匂わせる「師匠」の話だと思われます


 第3話「同じ顔の国」

 クローンの国の話

 親になる資格試験を導入している国です

 私もこの国の考え方と似た思いを抱いたことがあるので、ちょっと共感しました


 第4話「機械人形の国」

 永遠に行き続ける知能を持った機械の苦しみ

 類似の作品は多々ありますが、自分を機械人間だと思い込むおばあさんが登場することで切なさが募ります


 第5話「差別を許さない国」

 ×××××という伏字がたくさん出てくるのですが、その中に何が入るのか大変気になります

 どうやら国内では差別用語らしいのです

 その言葉を使用しただけで、罵詈雑言の嵐です

 一体どちらが差別しているのやら…


 第6話「終わってしまった話」

 どう解釈していいのか分からない話ですが、心が温かくなる話

 家業を継ぐことができず、別の生き方を強いられたことに虚脱感を覚えてもやがてその生活に慣れ、うらみつらみは過去のものとなるのでしょう