反自殺クラブ―池袋ウエストゲートパーク〈5〉 (文春文庫)/石田 衣良
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 文春文庫の『いい男の35冊』に選ばれていた石田衣良さんの『池袋ウェストゲートパーク』の第5弾でございます

 相変わらずマコトは他人の災難に目を瞑っていられない性分らしく様々な厄介事に巻き込まれています

 厄介事のネタって尽きないですね…

 なぁんて簡単に書きますが、ここで描かれている問題というのは、本当はこの世のどこかで起こり得る、またはもう起こっていることばかりなんですよね

 私は物語とタカをくくって読んでいるので、若干現実感が希薄なのですが、よくよく考えるとそういう話です

 物語というからにはオチがある

 シリーズとして『池袋~』を読んでいると、毎度マコトがなんらかの片をつけてくれることが予想できる

 そういう決まり事の中、そういう安心感の中で、エンターテイメントとして作品を楽しんでいるわけです

 目を背けたくなるような問題に直面しても、どんな惨状が描かれていても、それは解決し、依頼者の状況は好転する

 めでたしめでたし

 しかし、それにカタルシスを覚えるようではいけないんじゃないかと、この作品群を読んで漠然と思いました

 マコトに出会った幸運な一握りの人生はそれで救われたかもしれない

 でも現実の世界には、それと同じような思いをしている何百、何千という人が存在しているのだから

 虚構の世界で問題が解決したとしても、それを楽しんでいるだけのうちはただのストレス解消に他ならないんではないか、と思うのです

 じゃぁ、自分には何ができるのか

 石田衣良さんが掲げた問題提起を少しはまともに考えてみようかな

 娯楽としての読書からちょこっと脱却を図ってみたいと思います


『スカウトマンズ・ブルース』

 やり手の風俗スカウトマンと、彼に恋するウエイトレスの物語

 ウエイトレスはスカウトマンに恋焦がれるあまり、自らも風俗の道に入ろうとするが、捕まったのが性質の悪い斡旋事務所

 マコトは彼女を取り戻すために作戦を開始する


『伝説の星』

 かつてのロックスターが、不動産詐欺の片棒に…

 お母さんの激励を受け、マコトは詐欺団からの足抜けに一役買うことに


『死に至る玩具』

 あなたが、あなたの娘が遊んでいるお人形が、誰かの生命と引き換えにして生産されているとしたら、あなたはどう思いますか?

 中国の玩具生産工場で過酷な労働を強いられた末に亡くなった女性の妹とマコトが、大手玩具メーカーを相手に戦う


『反自殺クラブ』

 自殺を食い止めろ

 これ以上、悲しい思いをする人を増やさないために

 集団自殺をコーディネートするサイトのコーディネーターを捕まえるべく、反自殺クラブのメンバーとマコトが潜入捜査を決行