- 夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)/米澤 穂信
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以前ご紹介した『春期限定いちごタルト事件』の続編です
本作では、主人公の小鳩くんと小佐内さんが、なぜ小市民たることを切望するのか、そのわけがわかります
人間誰しも自覚した欠点はあるものですが、それは小鳩くん・小佐内さんの両名にも言え、また二人はその性質を省み矯正しようと試みています
小鳩くんには詮索好きで推理好きという欠点
小佐内さんにはやられたらやり返すという欠点
こうして文字にしても、それほど難儀な欠点だとは思われない方もいらっしゃるかもしれません
小鳩くんは好奇心旺盛で知的なタイプといえるでしょうし、小佐内さんも負けず嫌いで向上心があるといえるかもしれません
しかし過ぎたるは及ばざるが如しとはよく言ったもので、多すぎるのはやはり欠点なのです
本作では、小佐内さんのやりすぎ具合がよく現れています
と同時に、小鳩くんの真の欠点も浮き彫りにされます
物語の筋は、夏休みを利用したスイーツ食べ歩きの計画とその最中で起こった小佐内さん誘拐事件
小鳩くんは推理好きの性質を遺憾なく発揮し、事件を解決へと導くのですが、事件の背後には恐るべき黒幕の存在が…
その黒幕の存在が心胆を寒からしめます
黒幕の思惑を念頭に本作を再読すると、あまりにも巧緻に張り巡らされた伏線に狼狽すること必至
小鳩くんならずとも「やりすぎだ」と思うことでしょう
でもやり過ぎざるを得なかった黒幕の心情を考えると、ちょっと沈黙してしまいます
確かに他にやりようはあったにしても、それを糾弾する資格は小鳩くんにはないなぁ…と
この話を読み終えて、小鳩くんの自認する欠点は本質ではないな、と思いました
それを気づかせるために仕組まれた事件だとしたら、あまりの深遠さに絶句です