なんくるない (新潮文庫 よ 18-18)/よしもと ばなな
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 表題作「なんくるない」を含め4編収録の短編集です


 私はよしもとばななさんのファンなので、文庫化された作品はほとんど読んでいますが、この作品は今までと少し趣が違うように思います

 明確にどこ、という訳ではないのですが…

 全編を通し、トーンが暗いように思うんです

 よしもとさんの作風は、身近な人の死と、大切な人を失った後の主人公の再生が主題になっており、美しくて胸がきゅんとなるような、そして明るい前向きさがありました

 ですが、この作品には、主題は同じでももっとどうしようもなく、足がとまってしまってうずくまっている人の姿が描かれています

 読んでいて元気になるような輝かしさはなく、身につまされるような感じです

 だからといって駄作というわけではないのですが、今までの作風に慣れ親しんでいると、あれ?っと思います


「ちんぬくじゅうしい」

 題名は沖縄の歌のタイトルだそうです

 主人公の家は3人家族

 仲良く暮らしているようでしたが、ある日の沖縄旅行を境に母の言動がおかしくなり始めます

 やがて母が新興宗教のようなものにはまってしまい、父との意見の相違で別居してしまいます

 母の家出に深く傷ついた主人公は、沖縄のおはさんの家に預けられます

 悲しみのどん底に落ち、どうしていいかわからなくなってしまった主人公を、おばさんのあたたかさが導く、というお話


「足てびち」

 電撃結婚に周囲が戸惑い、それを感じて戸惑うカップルのお話

 ある日、沖縄にいる友人の家に遊びに行くことになります

 その友人と奥様は、二人の中を受け入れ、認めてくれた最初の人になります

 初めてのびのびとカップルになれた二人

 自由人の友人と、趣のある奥様と楽しい日々を過ごすのですが…


「なんくるない」

 離婚後の傷心を癒すための沖縄旅行で、運命の出会いを果たすお話

 沖縄ってこういうことが起こりうるスピリチュアルな場所なんだなぁと思いました

 それから、自分の心と体に正直に生きることがいかに大切か、が伝わってきました


「リッスン」

 放浪の旅人の父と旅をする女の子と、出版社勤めの男が旅先の海岸で出会うお話

 「君の世界は君が日々作るの。」

 という言葉にぐっときました