「ノルウェイの森」は、ビートルズのアルバム「Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band」を繰り返し聴きながら書かれたと聞いたので、私も繰り返し聴きながら再読してみました。
音楽が行間を埋める。
そんな印象を受けました。
ノルウェイの森を読んだ当初、私はとても静かな物語だと思いました。語り手の主人公は理知的で客観的な人物で、文体がとても淡々としていましたし、37歳になった主人公が20年前のことを回顧しているという設定なので、達観した感じがしました。ただその分、感情の起伏が少ないというか、冷徹なイメージを持っていました。
(……今思うと、好きだった人の死に関する記憶を記録することが目的だったので、わざと素っ気ないフリをしていたのかもしれません。)
ところが、BGMにビートルズを聴くことによって、当時の時代背景というか、街の喧騒、空気、流行、主人公の感情の揺れが鮮やかに浮かび上がって見えました。例えて言うなら、今まで映像だけの「世界遺産」を観ていたのに、急に音楽とナレーションがついて、より躍動的になり素晴らしさがわかりやすくなった、というような衝撃を受けました。
音楽がある特定の記憶や感情を惹起することって、よくありますよね。
頭でわかるというより、感覚的に伝わったという感じ。
それまでは、自殺しちゃうヒロインに感情移入して読んでいたのですが、飄々としているように感じていた主人公の苦悩とか決意とかに気づいて、ちょっと見直したりして。
そういえば、この作品にはたくさんの楽曲が登場します。
元はといえば、主人公も飛行機の中でノルウェイの森を聴いたことがきっかけで、この回顧録を書き始めたのでした。
読書するとき、何を聴くか、あるいは聴かないかは人それぞれですが、この名アルバムと名作の組み合わせはベストマッチですので試してみてくださいね。

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