さて、 一般人も気軽にこうやって文章をさらすようになった現在、
文字の使い方の規範性なんて気にしないのかもしれないが、
だからこその問題があるのです。
おもに戦後から、 いろいろな流れを経て現在の漢字表記があるわけですが(*1)、
昭和21年に、「当用漢字表」が議決されると(*2)、「法令・ 公用文書・新聞・雑誌
および一般社会で,使用する漢字の 範囲を示したもの」として、拘束力を持ったわけです。
で、そのほかにもいろいろあったわけですが、 文字のどうのこうのの話としては、
この字体(*3)が やがて1978年に出てくる JIS X 0208 に反映されます(*4)。
当用漢字表では、“字体の整理”を行ったため、
表内の漢字についていわゆる康煕字典体とは違う字体に なったものがあります(*3)。
それらは、78年のJIS X 0208(通称78JIS)で 当用漢字表の字体は第1水準に、
康煕字典体は第2水準として 登録されるという対応がありました。
このとき、 当用漢字表外の漢字は康煕字典体が第1水準になっていました。
1981年、国語審議会は常用漢字表を制定します(*5)。
このとき、常用漢字表には「括弧に入れて添えたものは, いわゆる康熙(き)字典体の活字である。
これは明治以来 行われてきた活字の字体とのつながりを示すために 添えたものであるが,
著しい差異のないものは省いた」 とあるように康煕字典体の字(いわゆる旧字体)が掲載されます(*6)。
1983年、JIS X 0208 に手が加えられ、83JISが公表されます(*7)。
このとき、“字体の整理”をJISがやっちゃったからさぁ大変。
例として挙げるなら、森鴎外や白鴎大学の 固有名詞に使われる「鴎」なんかがいいでしょうかね。
これは表外字なので康煕字典の字体のはずなのです。 つまり「區鳥」のはずなのに、
「區」が「区」になったのに便乗しちゃって「鴎」になった(*8)。
新字体を“拡張”したから「拡張新字体」と言われます。
で、また大変なことに、 旧字体と新字体に、同じコードを与えた。 これが“包摂”という考え方。1997年。
「鴎」は「區鳥」を包摂しているとしています。
現象としては、コンピューターによって違う字体が表示されるということになる。つまり、
一方では「鴎」、他方では「區鳥」が出る。 で、何が問題かというと印刷物。
古い文献を引用なんかするときなんかもうほんとに。
まぁそんな中を2000年に JIS X 0213 が出る。
これはいわゆる第3水準、第4水準というやつ。 第3水準に「區鳥」が入る。
でもこれまだ実装してるマシンが少ないらしく。 そこで国語審議会は「表外漢字字体表」を発表(*9)。
それが2000年12月。 これの「例示字体」に合わせる(*10)ために、 JIS X 0213 (追補1)が出される。
2004年。 去年のことです。
でもねー困ったことに、Unicodeというのも出てきた。 UCSとも。これ国際的な規格。2001年。
中国の繁体字・簡体字、台湾、日本、韓国、ベトナム、 その字を全てコード化。似てるのは一緒のコード。
これを JIS X 0221 とも言う。 現時点のは JIS X 0208 と JIS X 0212 が含まれている。 でも、
JIS X 0213 を盛り込んだのがそろそろ出る予定。
さて、冒頭の話に戻すと。
JIS X 0221 は3万字近く。異体字も何でも出せる。
三十数種あるという「辺」だって邊・邉だけじゃなくて 出せちゃうって。
……言われてあなた、どれが適切な漢字だって判断できる?
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(*1)国語施策年表
http://www.bunka.go.jp/kokugo/main.asp?fl=list&id=1000002586&clc=1000000076
(*2)当用漢字表(答申)
(*3)当用漢字字体表
ここで採用された簡易字体を「新字体」、 従来の字体を「旧字体」と言います。
(*4)JIS X 0208
http://www.asahi-net.or.jp/~ax2s-kmtn/ref/jisx0208.html
(*5)常用漢字表
http://www.bunka.go.jp/kokugo/main.asp?fl=list&id=1000003929&clc=1000000068
(*6)常用漢字表に掲載された旧字体
http://www.asahi-net.or.jp/~ax2s-kmtn/ref/old_chara.html
(*7)JIS X 0208 78JISから83JISへの変更点
http://www.asahi-net.or.jp/~ax2s-kmtn/ref/jis78-83.html
(*8)これはいわゆる“朝日文字”との話もある。 ほかのものについても、JISがやったというわけでなく、
慣用ですでにあったものも多いようだ。
(*9)表外漢字字体表
http://www.bunka.go.jp/kokugo/main.asp?fl=list&id=1000000518&clc=1000000500
(*10)JIS X 0213の追補までの取り組み
http://www.jsa.or.jp/domestic/instac/h13reports/jcs_houkoku.htm
★★★リンク
JIS X 0208 7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化漢字集合 http://www.webstore.jsa.or.jp/webstore/Com/FlowControl.jsp?lang=jp&bunsyoId=JIS+X+0208%3A1997&dantaiCd=JIS&status=1&pageNo=4
JIS X 0212 情報交換用漢字符号 ― 補助漢字
JIS X 0213 7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化拡張漢字集合
JIS X 0213 7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化拡張漢字集合(追補1)
JIS X 0221 国際符号化文字集合(UCS) ― 第1部:体系及び基本多言語面
JISコードについて
http://www.asahi-net.or.jp/~ax2s-kmtn/character.html#jis
JIS X 0212
http://www.asahi-net.or.jp/~ax2s-kmtn/ref/jisx0212/index.html
岩波書店ホームページから、文字の扱い
http://www.iwanami.co.jp/guide/txt.html
大修館書店HP「燕館」別館 漢字文化資料館 漢字基本用語集
http://www.taishukan.co.jp/kanji/kanji_yogo.html
漢字文化アーカイブ
http://www.taishukan.co.jp/kanji/
小形克宏の「文字の海、ビットの舟」――文字コードが私たちに問いかけるもの
http://internet.watch.impress.co.jp/www/column/ogata/index.htm
特別編17 人名用漢字の大幅増は、JIS文字コードをどう変えるか
http://internet.watch.impress.co.jp/www/column/ogata/sp17.htm