2025年11月7日付の「STB NEWS」が、
『禁漁から一転、再開へ「ありがたい」漁師から安堵の声 小型船のスルメイカ漁 道が特別採捕許可』
と題した記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、日本の水産資源の管理について、考察しました。
《記事の要約》
小型船によるスルメイカ漁が、禁漁から一転して11月10日から再開される見通しとなった。
豊漁により全国の漁獲量が上限の4900トンを超え、10月下旬に水産庁が採捕停止命令を出したが、11月5日に857トンの増枠が決定された。
しかし、依然として漁獲量超過が続き、函館などではイカが品薄状態となっていた。
北海道の鈴木直道知事は、道が管理する定置網の漁獲枠約400トンを小型船に再配分し、「資源調査」の名目で特別採捕を許可する方針を発表。
11月10日からの漁再開を目指すことになった。
ただし、再び上限を超えれば再度の休漁もあり得るため、漁師からは安堵と不安の声が交錯している。
一方、函館のスルメイカ取扱量は10年間で10分の1以下に減少。観光客の目当てだった「活イカ」も姿を消しており、地域経済への影響が深刻化している。
北海道いか釣漁業協会は、一隻当たり1日500キロの上限を設け、資源保護と漁業維持の両立を図るとしている。
(要約、ここまで)
《筆者の考察》
■ 禁漁から解禁への背景
今回のスルメイカ漁の再開は、単なる「豊漁」ではなく、制度上の調整による“苦肉の再開”である。
青森などで予想を上回る漁獲が続き、全国の漁獲可能量(TAC=Total Allowable Catch)を大幅に超過した結果、水産庁は禁漁を指示。
しかし、北海道などでは観光業や地元市場が打撃を受け、函館では「活イカ」が消えるほどの品薄に。
そのため、北海道庁は「資源調査」という名目で特別許可を出し、上限付きでの再開を認めた。
実質的には経済的打撃への緊急救済措置であり、漁師や流通業者の生活を支えるための一時的な妥協策といえる。
■ 水産資源管理の課題
しかし、この“特例解禁”は、日本の水産資源管理の脆弱さを浮き彫りにした。
日本の漁業は「獲れるうちに獲る」という慣行が根強く、TAC制度があっても実効性を欠く。
北欧諸国では船ごとに厳格な漁獲枠を設定し、違反には高額罰金や免許停止を科すが、日本では監視やデータ共有が不十分で、超過が常態化している。
さらに、業界内には「先に獲った者勝ち」の発想が根強く、地域間の補完や協調が進まない。
今回も、豊漁地域と不漁地域の連携が取れず、結果的に全国的な禁漁に追い込まれた。
■ 今後に必要な対応
今後は、科学的データに基づく資源量の把握と、漁獲枠のリアルタイム管理が不可欠だ。
AIや衛星観測を活用し、生息数や移動ルートを正確に把握する仕組みを整えることが求められる。
また、漁師の倫理観に依存する運用から脱し、政府主導での「強制力ある管理制度」へ転換すべきである。
特に、漁業補助金のあり方も見直しが必要だ。獲りすぎて資源が減った年に補助金で救済する構造は、持続性を損なうだけである。漁業者が安定的に収益を得られるよう、資源維持を前提とした「長期的漁業モデル」への移行が急務だ。
■ 結論
スルメイカ漁の再開は、地域経済への朗報であると同時に、資源管理の限界を示す警鐘でもある。
短期的な利益を優先する漁業構造を改め、科学的根拠と協調のもとに持続可能な漁業体制を築けるかどうかが、日本の水産業の未来を左右する。
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