夜中に目が覚めたら

まりこさんがベットの端に腰かけて
身づくろいをしていた
酒に張り倒されて

起きられない僕横目で笑ってビール
もらうわと冷蔵庫あけて
なみ・なみ・なみとグラスに注いで
まるで薬あける様に飲み干して
大きなため息を

遠慮無しに吐いて
それから下着姿でソファに腰かけて
身体のあちこちの
青アザやバンドエイド*を数え乍ら
さびしいと独白く

お酒に酔えばいつも

必ずいくつかの傷をこさえるのよ
みてよこんなに沢山
お湯を沸かす時に

カップラーメン食べるつもりで火傷
それにガラスで切った指先
ほら・ほら・ほらとグラスをあおって
何か無理に流し込んでるみたいだ
お酒やめればいいのに

そんなに好きかときけば
ふいに彼女は怒った様に吐きすてた
酒なんて大嫌いよ
だけど男にひっかかるよりずっとましね
そうよ百倍は好きよ

あんた幸福だから

わからないのよあたしこれから何処へ
帰ると思うの
誰も待ってない部屋

灯り点けた時の淋しさあんたには
一生わからないわよ
酒・酒・酒友達などないわ
男と心中なんて死んでもいやだわ
さみしいねお酒より

上手な嘘つきの
男に逢いたいわね処であんた
バンドエイド*持ってない?
新しい傷が出来たと彼女は笑って
靴下をはいた


By さだまさし