冒険ある朝目覚めると、世界は本の王国だった。住民のひとりひとりが、何かしらのテーマを担った独立した書籍だった。彼は、長い年月を本の王国に過ごし、誰に会うにせよ、それぞれの持つテーマに刺激された。あるときは感化され、あるときは反発し、あるいは、ことばにならない淡い恋を想ったりした。長い年月の果て、遠い昔、かつてそこに居たとおぼしき、いわゆる元の世界に、彼は戻っていた。実は、彼は最初からどこへも異動などしていなかった。ここもあそこも、ここだしあそこだった。 にほんブログ村