シンデレラは12時を過ぎて、終バスが無くなった事に気がついた。
嗚呼、どうしてどうしてあたしったらいつも、この時間になるまで馬鹿みたいに、いつもいつも・・・
誰も居なくなった暗い事務所にまごまごと鍵をかけ、じっとりとまとわりつく夜の湿気に肌も髪もやられながら、バス停を超え、セブンイレブンを超え・・・何が入っているのか、もう遠い記憶の一部になってしまった重い鞄を引きずりながら、駅までの30分、歩く覚悟をした。
夜の闇は濃厚な湿度とへんてこりんな匂いに満ちていた。街灯は20メートル置きに、オレンジ色の小島を映し映しだしていた。
幹線道路に車一台いない、なにも通過しない深夜。
すると、遠く遠くから一瞬のうちに闇を切り裂いて横につけた爆音、見れば古びた一台のバイク。
よお、お嬢さん、いかしてるねえ。そんな鞄なんかそこらにほったらかして、おれの後ろに乗ればいいよ。
バイクは第三京浜をひた走り、江ノ島に到着したのがきっちり37分後。
王子様とは似ても似つかない野蛮人。
シンデレラを見そめた王子様と、このバイク男、彼女にとって本当に必要なのは、どちらだと思う?
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