毎年、季節にならなければ思い出さないほど日々を彷として過ごしているから、例えば、ゴールデンウィークの頃の新緑の若いみどりを街道筋の街路樹に見たりすれば、はっとする。
日本に生まれて良かったと思うのは、変わらない日常であろうとも、緩やかな景色の変化に彩られるところである。
常夏のバリ島は、どうか。季節の変化が無いだけに、判で押したような毎日を過ごすのは苦痛であるか。
答はノンである。
陽に焼かれ、黒々と生い茂った木々の枝の先には、幼いやわらかい色彩の葉たちが、自分たちだってすっかり陽に焼け黒くなって、過剰な光合成を繰り広げる立派な葉になるのだと願っているはずなのだ。
きっと木々は、ひと枝の中に春夏秋冬が眠っている。
黒から新芽色までのグラデーションをつくるのは、特殊な花を見るようで、芸術的意匠を感じるのだ。
それもまたよし。
どこにでも、土地なりの美しさはある。
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