夜。

ソファにもたれ、恐らく居眠りしたのだろう。国境を渡る夢にすっかり魅了された。

白い民族衣装の武装キャラバンに紛れ砂漠を越える、そんな夢だった。
目覚めると、ソファの向かいにはつけっぱなしのテレビにスポーツニュースが流れていた。最後に時計を確認した時から約2時間が経過していた。
夢とうつつの狭間で、いつしか国境を越えることを忘れた俺を発見した。

俺は少しうろたえた。俺の生き方は、これでいいのか。あの頃探しあぐねていたエル・ドラドに続く道を、まだ見つけていないじゃないか。
テレビを消し、飲みかけのジムビームをいっさんあおり、空のグラスに新しい一杯を注いだ。
俺は誰だ。確か探求者だったはずだ。俺はエル・ドラドを探していたのだ、まだ目的は果たされていないじゃないか。それを忘れてはいけないはずだろう。
探求者だからこそ、自由の価値を分かっていたつもりだった。

俺は今、自由の価値を分かっているか。


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